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2千年前のフットボール

 ダルマチアというアドリア海に面した地方には、2千年も前からボールゲ−ムがあったという。シーニ(SINJ)という町にある古い建物にはめられた石碑に、少年がボールを持った彫像があり、その碑文を解訳すると、古い時代にKENOI、あるいはKIDA、またはCHOLAと呼ばれるボールゲ−ムが行なわれていたことがわかったらしい。
 このあたりは古代ローマ帝国の勢力下にあり、遺跡も多く、その文化生活の影響は十分あったことが考えられる。もっとも、それがフットボールの古い形だったのかどうかはともかく、東方と西方の勢力がぶつかり合い、争いの絶えなかったこの地に、早くからボールゲ−ムが根を下したと想像するのは楽しい。
 ダルマチアの属するクロアチア地域は、第1次大戦の前は、オーストリア=ハンガリー帝国の領土で、したがって、西方からの文物の輸入も同じ南スラブ人の住む地域の中でも早く、サッカーも1880年代のはじめには伝わっていたようだ。それより少し遅れて、セルビア王国(1878年独立)のベオグラードでも、英国人によって伝えられたという。


(サッカーダイジェスト 1989年12月号「蹴球その国・人・歩」)

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