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特別編 東京オリンピック延期について

 新型コロナウイルスという思いもよらぬ難敵によって、2020年7月24日(サッカー競技は7月22日)に開幕するはずだった2020東京オリンピックは1年間の延期を余儀なくされた。
 1964年大会をはじめ、すでに数々の国際大会を開催し、運営経験も申し分がない東京にとって、世界の目が集まる2020年大会の開催は、よほどのことが起こらない限り必ず成功させることができたはず。今回の延期については本当に予期せぬことだっただろう。
 開会式が予定される2021年7月23日までの1年あまり。延期されたからといって手を緩めている時間はない。運営はもちろん、各競技団体は強化体制などをチェックし、時に見直しをしながら来るべき大会に向けてしっかりと準備をすることが求められる。このようなアクシデント、ピンチの中で、最高の大会をつくり上げることができるかどうかは、各スポーツ団体にとって、まさに腕の見せどころだ。
 サッカーは、玄人を自認する者であるほどワールドカップを重要視する傾向にあるが、オリンピックといい加減な気持ちで向き合ってはいけない。多くの日本人にとってオリンピックは最高のスポーツイベントであり、2度目の自国開催となる東京オリンピックは片手間な気持ちで臨んではいけない大きなチャンスでもある。
 オリンピックというと開催地の東京に耳目が集まるが、サッカー競技は女子決勝戦が開催される新装のオリンピックスタジアムのほか、東京スタジアム(味の素スタジアム)、札幌ドーム、宮城スタジアム、カシマサッカースタジアム、埼玉スタジアム2〇〇2、横浜国際総合競技場(日産スタジアム)と全国7会場で開催される。1964年東京大会のサッカー競技は国立競技場や駒沢陸上競技場など首都圏1都2県で開催されたが、当時の関西協会の尽力で、日本など準々決勝で敗退した4チームによる非公式の順位決定戦が大阪・長居と京都・西京極で開催され、関西のサッカーファンを大いに楽しませた(日本は1回戦でオシム元日本代表監督の2得点などでユーゴスラビアに1−6で破れた)。男子は23歳以下(2021年大会は24歳以下の可能性がある)の年齢制限はあるが、この年代の各国の優秀な選手のプレーを見られることはどんなに素晴らしいことか、その意義を広く浸透させる時間にもしてほしい。
 私は1964年に続き、2度目の東京オリンピック決勝戦を取材したいと願っている。ここからの1年間は各国の情報を追いながら、1964年以後のオリンピックを通じ日本サッカーが歩んできた歴史を振り返り、オリンピックそのものを見直す時間に充てたい。それはとても楽しい時間になるはずだ。

(月刊グラン2020年6月号 No.315)

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