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1970年W杯「ジュール・リメ杯を永久保持」

 本大会の1次リーグ第3組、暑いグァダラハラの会場で、ブラジルは6月3日の対チェコ戦を4-1で飾り、第2戦ではチャンピオンのイングランドを1-0で破った。トスタンが左サイドを持ち上がって、中央へ送ったボールを落下する寸前に止めたペレのトラッピングのうまさ。相手のDFは、飛び込めばはずされるため、金縛りにあったように動くことができない。その外側へ走り込んだジャイルジーニョに送ったペレのパスは正確無比。ジャイルジーニョは走り込んだ勢いをそのままに、ダイレクトシュートでバンクスのゴールを破ったのだった。  第3戦はルーマニアを相手に3-2。DFラインが58年よりも弱いことが明らかになったが、試合そのものはブラジルのペースで、まったく危なげなかった。
 準々決勝でペルー、準決勝でウルグアイと南米勢を倒したが、常に攻めて出るブラジルは、カテナチオの本家イタリアとの決勝でもその攻撃サッカーはさらに冴えて、4-1で快勝。守りのサッカーよりも攻める楽しさ、サッカーの上手なチームが勝つ試合を見せ、世界はテレビのカラー中継で改めてブラジルのサッカーに酔った。この試合の先制ゴールはペレ。左サイドのリベリーノから上がったハイクロスを、見事なジャンプ・ヘッドで決めた。相手のDFもマークしていたが、ペレのボールの高さを見極める目と、ジャンプのタイミングのよさには及ばなかった。イタリアはクロドアルドのバックパス(ヒールキック)ミスから同点ゴールを拾って前半を終わるが、ジェルソンがブラジルの2点目を鮮やかなるロングシュートで決めた。さらにFKからジェルソンのキックをペレがヘディングでゴール前へ流し、ジャイルジーニョが突進して3-1。4点目は、この試合を象徴するビューティフル・ゴールだった。クロドアルドがミッドフィールドの狭いスペースをキープして、ジャイルジーニョにパス。ジャイルジーニョは中へ持ち込んでからペレへ渡す。ペレはこれをキープして、右サイドを走り上がったカルロス・アルベルトへ絶妙のシュートパス。アルベルトが強烈なダイレクトシュートを蹴り込んだ。
 ペレはブラジル代表チームの通算100点目のW杯におけるゴールと、ババのW杯2大会の合計得点と同じゴールを記録した。
 ブラジルは4人のDFがゾーンで守り、2人のセンターバックが互いにカバーしながら、右のアルベルト、左のエベラウドらが攻めにも出た。
 イタリアはマン・ツー・マンでマークをしたが、ブラジルのMFジェルソンへのマークが甘くなり、またジャイルジーニョが左へ動いたために、ファケッティがついてゆくことで左サイドにオープンスペースができてしまい、そこへ攻め上がってきたアルベルトをチェックするDFがいなかった。
 こうしてブラジルは、ペレを軸に再び世界の王座に就くとともに、ジュール・リメ杯を3度、手にすることによって、この黄金トロフィーを永久に保持する栄誉を担った。
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