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ボランティアの大きな働き

 アルゼンチン、スペイン、メキシコといった国々でのワールドカップでは、スペイン語の不勉強な私には、頼りになるのはプレスルームのスチュワーデスだった。もろもろの案内だけでなく、大会の公式ソングや現地の新聞の英訳まで頼んだものだ。
 学校の先生あり、家庭主婦あり、大学生あり、いずれも大会期間、それぞれの語学力を生かしてのボランティアだった。
 ウェールズ系の先生からみたラテン気質論はおもしろかったし、大学生との食事で魚の名をひとつずつ教えてもらったのも楽しかった。
 ワールドカップにボランティアという言葉がクローズアップされたのは94年のアメリカ大会から。合計1万2千人、一会場に1500人が多くの業務にかかわった。18歳から80歳までと年齢の幅は広く、会場で切符のもぎりをしていた紳士が、もと校長先生だったりした。スポーツ・ボランティアの組織は日頃からしっかりしている。たとえばボストンならフォクスボロ・スタジアムでのアメリカン・フットボールの試合のたびに来ているので、会場係は通路やトイレなど場内の設備を熟知していた。
 前回のフランス大会でも輸送やプレス、会場、セキュリティーなど150種類にも及ぶ仕事を合計1万2千人のボランティアがやり遂げた。
 アメリカでもフランスでも、こうした人たちが、ときに不満もあるはずなのに、常に笑顔があり、異邦人への温かみがあった。アメリカ大会決勝会場のパサデナのプレスの受付にいた日本人女性は「ここに住んでいる人たちは、何かあると集まって手伝うのが当然のことのようで、また、それが楽しみなのです」と言っていた。
 すでに日本でもJリーグの試合のたびに活動しているグループもある。ワールドカップを機に、スポーツとボランティアの新しい関係が広まろうとしている。

(朝日新聞 2001年10月2日)

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