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ヘディングの力強さと美しさ ドイツ―米国
2002年6月21日、蔚山での準々決勝。ドイツ対米国で、ドイツは39分のバラックのヘデインクシュートで貴重なゴールをもぎ取った。ベスト4への道を大きく開いたこの右FKからの空中戦を、もう一度振り返ると――。
右サイドでフリングスがFKのボールをセットすると、左利きのツィーゲがやってきた。自分の左足でゴールに向かって曲がるボールを、蹴ろうと考えたのだろう。
バラックとクローゼ
ボールの位置に、そのツィーゲとフリングス、ボールの落下予想地域に、ヌビーユ(171センチ)、リンケ(183センチ)、バラック(189センチ)、クローゼ(183センチ)、メッツェルダー(193センチ)。エリア外に3人が立つ。
これに対して、米国は、ペナルティー・エリア右角、つまりFKからの直接ゴールヘのコースの壁に2人、落下予想地域に7人、とエリア内部に9人を配し、エリアの外10メートル前方に一人が立って、まず全員で防御の構えに入った。
ドイツの空中戦の主役は、バラックとクローゼ、小柄なヌビーユは二アサイドでの合わせ役、メッツエルダーはファーサイドを押さえる役だろう。
そのバラックには米国のこれも188センチのサネーが、クローゼにはバーハルター(185センチ)がつき、メッツェルダーにはマクプライド(183センチ)が、リンケにはポープ(185センチ)がマークしていた。
落下点の見極め、早い踏み切り
ツィーゲが蹴ったボールは、狙い通り、高く上がってカーブを描きつつ、ゴール前、数メートルヘ…。スロービデオを見ると、1:バラックはボールが蹴られた瞬間に、2:ニアヘの気配を見せて、サネーを牽制しつつ、3:ボールの落下点をいち早く見極め、4:サネーの背後を回って、5:相手より早くジャンプに踏み切っている。
真っすぐに上昇するのでなく、幅のあるジャンプだったから、高い打点でとらえたヘディングシュートもまたすごい勢いでゴールラインにたたき付けられた。
サイドから攻める――は、私たちが旧制中学でプレーをしていたころ、いや、それよりずっと以前から言われてきた最もシンプルな攻撃の一つだが、クロスの正確さと、シュータ一(ヘッダー)の技術(高さ、強さを含めて)が組み合わされば、まことに美しく、力強いゴールシーンを生み出すものだ。
この5分後、クローゼが今度は左からのクロスをヘディングした。ポストに当たって得点できなかったが、事前の動き、走り込みのコースの取り方の見事さに、ヒザを打つ思いがした。
(週刊サッカーマガジン2003年11月11日)