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ローマ、東京、メキシコ(20)

準決勝、対ハンガリー

 68年10月22日、メキシコ五輪の準決勝、日本対ハンガリー(アステカ競技場)は、0−5の敗戦となった。
 東京五輪でも金メダルを取ったハンガリーは、今回も優勝候補とみなされていたが、0−5は予想外の大差で、いささか気になったが、PK二つを判定され、必ずしも点差ほどの試合ではなかったとの詳報を読んで、協会の留守番部隊もホッとする。
 ゴールを奪われたのは30分を過ぎてからで、スッチに決められたが、この失点までに2度、決定的なチャンスを作りながら、宮本輝のシュートはGKに防がれ、渡辺のシュートはポスト左に外れたのが惜しい。52分に小城がドナイと競り合ったときに、ハンドでPKをとられ2−0。
 ここから次第に差が出始め、59分にスッチがドリブルで日本ディフェンスを破ってシュート。3−0と大勢が決まる。65分にまたまたPKで4点目、73分にも5点目を奪われた。ノバックやスッチといった世界選抜にも入る選手を軸にしたこのチームは、日本をよく調べ、釜本へのマークもしっかりしていた。


メキシコ戦をどう戦う

 次の日、10月23日10時30分からの練習のときには、ハンガリー戦のショックは消え、全員が3位決定戦へ気持ちを切り替えていた。
 試合前の日本チームの指示は、(1)スイーパーシステムで守りを固めることはいつもどおりだが、速攻のときにチーム全体の押し上げを強化するために、リンクマンには宮本輝と渡辺を置く(2)この二人は守備のときは中盤でゾーン・ディフェンス。ボールを取れなくても横パスを通させて、相手の攻めのスピードを遅くさせる(3)山口、片山は相手の両ウイングにクローズド・マーキングし、戦意を喪失させることを狙う(4)得点力あるペレーダには、小城がどこまでもついてあたる(5)相手両FB、特に左のペレースは攻撃に出てくるので、松本は守備をしっかりやる(6)釜本は守備を考えず、常にオフサイドぎりぎりに残り、一発を狙う(7)攻撃は速攻を中心に、大きく左右からクロスを出し、チャンスには思い切りのよいシュートを。
(岡野コーチの大会リポートから抜粋)


押されながら先制ゴール

 10月24日、15時30分。アステカ競技場での3位決定戦はスタンドの大声援を受けたメキシコの攻撃で始まった。メキシコがボールを持ったら、GKと7人の守備者で守るという考え方であるため、守備と前線との間にスペースが広がりやすく、中盤でボールを拾われてしまう。
 メキシコは初めのうち、エリア外からのロビングボールで攻め、これが跳ね返されると、ショートパスとドリブルを組み合わせて崩しにかかってきた。
 17分に守りに回っていた日本にチャンスが生まれる。杉山が左タッチ沿いにドリブルし、切り返して後ろへ戻り、エリア内の釜本へパス。このボールを胸でトラップした釜本が、ゴール右下隅へ。釜本は後に、このシュートは左のインステップではなく、インサイドに当たってのミスキックだった、と語っている。当たり損ねたために、GKの届かぬ隅へ飛んだのかも――。


ハポン、ハポン、ラララ

 攻めながら得点できない。しかも一発を食らった。メキシコは焦って30分に二人の選手を入れ替える。
 その9分後、杉山―釜本で2点目。山口からのボールを受けた杉山が中へ持ち込み、エリア外の釜本へグラウンダーの早いパス。今度は釜本のイメージどおり、タックルに来るディフェンダーの股下を通ってゴール左隅へ。2−0。
 後半始まってすぐ(2分)にPKのピンチ。硬くなったペレーダのキックをGK横山が取ったが、もし、これがゴールしていたら…。
 なおも熱を帯びるメキシコ攻撃。彼らのドリブルとパスでいまにも崩されそうになりながら、ひたすら耐える日本。長い45分は終わった。
 観客の声援は“メヒコ”から、“ハポン、ハポン、ラララ”に変わっていた。


【グループリーグB組】
14日 日本 3−1 ナイジェリア、スペイン 1−0 ブラジル
16日 日本 1−1 ブラジル、スペイン 3−0 ナイジェリア
18日 日本 0−0 スペイン、ブラジル 3−3 ナイジェリア

【準々決勝】
日本(B組2位) 3−1 フランス(A組1位)
メキシコ(A組2位) 2−0 スペイン(B組1位)
ハンガリー(C組2位) 1−0 グアテマラ(D組2位)
ブルガリア(D組1位) 1−1 イスラエル(C組1位) ※延長抽選

【準決勝】
ハンガリー 5−0 日本
ブルガリア 3−2 メキシコ

【3位決定戦】
日本 2−0 メキシコ

【決勝戦】
ハンガリー 4−1 ブルガリア


(週刊サッカーマガジン2001年9月26日号)

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