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フランクフルト:ルーニーのレッドカード、不得手なPK戦。先例の教訓は生きず、イングランド敗退

 新年おめでとうございます。今年2007年は、大正6年(1917年)5月に第3回極東大会に日本代表が参加し、初めて国際大会を経験してから90年になります。


「Oh,No」とサンデータイムズ紙

 さて本題のワールドカップの旅は――。フランクフルトのホテルで、ベスト4への戦いの跡を振り返るところですが、まずは、スウェーデン人の監督すべん・ゴラン・エリクソンとデビッド・ベッカムのイングランドのPK戦敗退からです。
「OH,NO,NOT AGAIN!」
 7月2日付のサンデータイムズ紙は、“イングランドは、またしてもワールドカップのペナルティー・シュートアウトを失った”と、一度ならず二度ならずのPK戦敗退を報じていた。
 準々決勝は、6月30日と7月1日に行なわれ、まずベルリンでドイツがアルゼンチンと1−1の後、PK戦で勝ち、イタリアがハンブルクでウクライナを3−0で下した次の日、午後5時からのゲルゼンキルヘンの戦いで、ポルトガルがイングランドと延長0−0、PK戦3−1で勝ち、午後9時からのフランス対ブラジル(フランクフルト)はティエリ・アンリのゴールでフランスが1−0で制した。
 ポルトガル対イングランドは両チームにそれぞれに惜しいチャンスがあったが、ゴールを生まず、イングランドはベッカムが足の故障で52分に退く(アーロン・レノンと交代)。その10分後にウェイン・ルーニーがボールの奪い合いの中でリカルド・カルバーリョを踏んづけてレッドカードを出された。10人のイングランドの延長を含めての頑張りは、98年フランス大会の対アルゼンチン戦(ベッカムのレッドカードでやはり10人となった16強1回戦)を思い起こさせたが、PK戦で敗れるのも似た形となってしまった。
 ポルトガルのシモンのキック(成功)で始まったPK戦は、フランク・ランパードが止められ、ウーゴ・ビアナがポストにあて、オーウェン・ハーグリーブスが決めて、1−1。3人目のペチが外した後、スティーブン・ジェラードもGKにセーブされてしまう。
 4人目、エウデル・ポスチガが2点目を決めると、イングランドはジェイミー・キャラガーがまた止められる。そしてポルトガルの5人目、クリスチアーノ・ロナウドがしっかり蹴り込んで3点目を奪い、延長を含めての熱闘に決着がついた。


W杯でもEUROでも

 いつものことながら、イングランドはPK戦に弱い。近いところでは2004年の欧州選手権準々決勝で、やはりポルトガルとの2−2の後のPK戦でトップのベッカムが外し、7人目のダリウス・バッセルがリカルドに止められて5−6だった。この場面は私は現地にいなかったが、98年の先述の対アルゼンチン、90年の対ドイツという二つのワールドカップでのPK戦負け、そしてEURO96での対ドイツ準決勝(負け)と対スペイン準々決勝(勝ち)は取材に行っていた。彼らはEUROで1勝2敗、ワールドカップで2敗でビッグトーナメント(大会)でのPK戦は1勝4敗である。
 9m15cmのゴール正面の位置からのペナルティーキックは、キッカーが有利であることに変わりはない。
 特にトップクラスの大会であれば、キッカーが、左右どちらかのゴールネットのサイド(ポストとゴールネットの後方枠との間)へ向かってシュートを送り込めば、彼らのパワーから見て、たとえゴールキーパーの読みが当たったとしても、手が届くよりボールが飛び込むほうが早いのが普通である。
 90年ワールドカップの決勝で西ドイツ(当時)のアンドレアス・ブレーメが決めて決勝ゴールとなった試合中のPKは、右足でゴール左下(左ポストすぐ内側)へ蹴ったもので、アルゼンチンのGKセルヒオ・ゴイゴエチェアはコースを読んで、手はポストに届くほど跳んだが、ボールの方が早かった。
 理屈からいけば入らないほうが不思議なのだが、キッカーは人だから、延長まで戦った疲れもあり、大舞台での緊張などから“迷い”もある。ときには気質の問題もある。
 ゴールキーパー側の話は別の機会にして、キッカー側の話を進めれば、キッカーの順番も大切になってくる。
 それは、後の者ほどプレッシャーがかかることである。76年欧州選手権決勝での失敗の教訓を生かしたドイツがその後のワールドカップ4回、欧州選手権1回のすべてに勝った試合のキッカーの順番を見れば、シュートの専門家であるFWを後手に持ってきている。これは終わり頃にディフェンダーが出てくるイングランドよりも気配りができていると思う。失敗の教訓はDFB(ドイツサッカー協会)には生きているが、FA(イングランド協会)はエリクソン任せなのだろうか――。
 強いはずのイングランドはキャプテンのケガ、ルーニーのレッドカード、そして不得手のPK戦と悪循環のうちに、またしてもベスト4を前に退いた。


(週刊サッカーマガジン 2007年1月23日号)

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