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フランクフルト→デュッセルドルフ:大会はドイツ、イタリア、フランス、ポルトガルの欧州4強の戦いに

フットボール・カンファレンス

 新年に入って、大阪でJFAのフットボール・カンファレンスを取材できたのは幸いでした。3日間の盛りだくさんな内容の全てをカバーしたわけではないですが、800人ものコーチたちが集まり、FIFAやUEFA、AFCの技術担当者、年齢別の日本代表コーチたちのスピーチを聞き、分科会で話し合いがもたれたのは、とても良かったと思います。
 松本育夫、小城得達といったメキシコ銀メダル世代からJや高校の若いバリバリのコーチ仲間を眺めながら、彼らの技術力アップへの熱意を頼もしく思ったものです。
 これについての感想は、私のホームページやCROSPOなどでもお話しますが、JFAの技術委員会の布啓一郎副委員長が、フランスのコーチの徹底的な反復練習の指導効果を見て、「とても勉強になり、繰り返し練習することが少なかった自らを反省した」と述べたことに共鳴し、このコーチの素直さに感じ入りました。
 みなさんの地道な努力で日本サッカーが前へ進んでゆけるように――。


準決勝取材のための鉄道旅行

 ワールドカップの旅も前号で準々決勝のイングランド敗退を見届けました。
 今回は7月3日、フランクフルトから鉄道でデュッセルドルフへ移動しながらの回想です。
 ICE、128列車の28号車、16番のシートを確かめる。窓際だった。
 フランクフルト発11時、デュッセルドルフに12時38分着の予定だった。7月3日の月曜日、大会はすでに準々決勝を終えて、4日にドルトムントでドイツ対イタリア、5日にミュンヘンでポルトガル対フランスの準決勝を行なうことになっていた。
 その準決勝の2試合ともプレス席が確保できるというので、気分は悪くない。ドルトムントのホテルが取れず、デュッセルドルフのホテル・エクセルシオールに泊まり、4日はボルシア・ドルトムントへ往復、5日は朝、6時52分の列車でミュンヘンまで、6時間半の旅ののち、21時からの試合を見る、という段取りだった。ドルトムントの前半キックオフが21時だから、その夜、ホテルへ戻るのは、もちろん深夜だが、生で見られるとあれば、それも苦にはならず、この日はキックオフまでの時間を利用して、ドルトムントの図書館で調べものをするという欲張ったプランを立てていた。


ジダン復活、ブラジル3連敗

「ベスト4がヨーロッパ勢ばかりは82年以来かな」と思う。
 前々日、つまり7月1日フランクフルトでのブラジル−フランスでロナウジーニョらは1点も取れず、ジズーとティエリ・アンリのフランスに敗れてしまった。
 この試合はまさにジネディーヌ・ジダンの復活劇といえた。ブラジル側のジダンへの警戒が甘かった。誰でもシーズン中の調子から見て、ジダンがこれほど働くとは予想しなかったのだろう。
 ボールをキープし、相手の意表をつくパスを出し、攻撃を組み立て、自らもシュートをする――。いわゆるプレーメーカーの歴代のトップ級の選手のなかでも、マルセイユ出身の“異邦人”ジダンほど体が大きくて、しっかりしていて、それでいて精妙なテクニックの持ち主は珍しい。少年のころ、アルジェリア人街の石畳の上での遊びで培われた足の裏を使っての引き技やピポットターンはブラジル人も羨望するほど。その彼の持ち芸が充分に発揮されるのを私はバルト・スタジオンのプレスルームのテレビで堪能した。


イタリアと欧州4強

 相手のキープレーヤーに厳しくマークに行かなくても、自分たちの攻撃陣が働けば、勝ちは自然に懐へ――というのがブラジルびいきの考え方だが、カルロス・アルベルト・ペレイラ監督は、これまでとメンバーを代えて、アドリアーノ、ロナウド、ロナウジーニョ、カカのマジックカルテットからアドリアーノを外し、ロナウジーニョを前に出し、MFにはジュニーニョ・ペルナンブカーノを入れた。監督にはそれなりの理由があったはずだが、うまくはいかず、調子の上がらないまま時間が過ぎた。
 もちろん、いくらかの見せ場もあったし、終了直前のロナウジーニョのFKの場面もあったが、結局、86年、98年に続いて、ブラジルはワールドカップでフランスに3連敗してしまった。
 86年は主力のジーコがケガからの回復途上だったし、98年パリでの決勝はロナウドの突然の体調狂いで、チーム全体が生気を失っていた。今度の敗戦はブラジル・サッカー史で、どのように見ることになるのだろうか――。
 ブラジルが脱落して、欧州4強の大会となれば、82年、ロッシのイタリアを思い出す。あの時、イタリアには八百長問題が絡んでいた。
 今度もスキャンダルの付録つきだが…、まさか…。1時間半の旅は空想のうちに終わりに近づく。


(週刊サッカーマガジン 2007年1月30日号)

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