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技術への情熱、強化への布石

マラドーナのように左利きでありながら、どちらのサイドへ上がってきても、相手ゴールへの脅威となるプレーヤーを軸に、変幻自在の攻め、相手の特色に応じて、自分たちの攻めの体形を変える、という理想のチームを築いて、メキシコW杯で成功。1978年の優勝の上に、さらに光彩を加えたアルゼンチンは、今、南米各国の中で、最も協会の運営もうまくいき、若手育成も効果があがっているとブラジルをはじめ他の国の関係者がいうほどだ。
エセイサ空港の近くに、巨大なナショナル・トレーニングセンターの建設も計画中。ジュニアからフル・インターナショナルまでの各年齢層の代表選手、代表チームを強化するためのものだという。アルゼンチン・サッカーの歩みを眺めるとき、私は、彼らが、この競技に注いできた情熱の大きさにいつも感嘆させられる。それはマラドーナのようなトップのプレーヤーが、ボールタッチの練習をしているときのすごい集中力。あるいは、マラドーナがドリブルしているときに、いつでもボールを受けられるポジションに走り込んできたバルダーノやブルチャーガ、あるいはエンリケなどのチャンスをつくり、ゴールをねらうカンのよさも労を惜しまぬ協調性と通じるものがある。
86年の優勝以来、87年の南米選手権をはじめ、親善試合などで、必ずしもいい成績をおさめていないビラルド監督とマラドーナのペアが90年W杯に向けどのようなチームをつくりあげるかを期待し、アルゼンチン・サッカー物語をひとまず終わりたい。
(サッカーダイジェスト1989年3月号より)

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