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74年西ドイツW杯 驚きと驚嘆

 ヨハン・クライフを初めて見たのは6月15日、それもテレビだった。6月13日にフランクフルトでの開幕ゲーム、ブラジル対ユーゴを見て、翌14日ベルリンへ飛び、そこで西ドイツ対チリを観戦。15日に今度はベルリンからシュツットガルトへ飛んだ。高名なクライフを見たいとシュツットガルトの競技場へゲーム(ポーランド対アルゼンチン)の始まる3時間前に入ってスタジアムの中のプレスセンターのテレビの前に陣取り、ハノーバーからの中継を見つめた。

 クライフと彼のチーム、オランダは、全く新鮮な感動だった。開幕戦でブラジルに失望し、ベルリンの西ドイツに不満だっただけに、ウルグアイをズタズタに切り裂いたオランダの攻撃と、クライフの一つ一つのプレーは、これこそワールドクラスと満たさせた思いだった。
 知らぬ間に興奮して足を動かして前の記者に当たったらしい。二度も振り向いて注意をされる始末だった。

 クライフについてはずいぶん聞かされもしたし、読みもした。しかし、オランダの一人ひとりがこれほど揃っているとは……。いや揃っているのも分かる。アヤックスとフェイエノールトはヨーロッパのトップチームだ。その両チームで編成されているから、ツブぞろいなのも当然だろう。しかし、これほど速く、これほど柔軟で、これほど華やかな展開をするとは……。


(サッカーマガジン 1974年10月号)

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