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プレーヤー育成の土壌

 注目しなければならないのは、この新しい考えを生み出したアヤックスの選手たちが、ほとんどクラブ生え抜きであったこと。彼らのチームづくりは、まず、クラブでの選手育成から始まっていたことだ。
 そして、その選手育成の伝統、手作りチームの流れは、今も変わることはない。

 クライフ世代が去って、10年、1980年代後期からライカールト、ファンバステンらが生まれた。
 今度のアヤックスの欧州制覇も、20歳そこそこの若手と、里帰りしたベテラン、ライカールトとの合作の成果だった。

 イングランドやイタリア、フランス、ドイツ、スペインなどに比べて国の人口が少なく、したがってスタジアムへ集まる観客数も多くはない。そのために選手への報酬も限界があり、大国への流出は止められない、との理由はあるにしても、荒い北海を埋め、干拓して国土を作ったオランダ人の創造性のあらわれといえる。
 サッカーファンは、もしチャンスがあれば一度、アムステルダムの市内を車で走ってみればいい。いたるところに緑の芝生のグラウンドが点在する。アムステルダムだけで、こうしたグラウンドは100面をこえているのである。

 来日するアヤックスに、私たちはトータルサッカーの本流のプレー、彼らの創造性と、豊かな土壌が育ててきた若い力を見たい。いま、増大する日本サッカーのヤングパワーを伸ばすためにも。


(1995年12月 第10回トヨタカップ・プログラム)

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