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92年欧州選手権 2試合でノーゴール

 アマチュアがオリンピックで好成績を持つデンマークに、サッカー興隆の勢いは感じられても、今大会は予選2位の代替出場という点から、グループリーグ突破を予想する人は少なかった。
ただし、グループ1の第1戦、対イングランドを見て、そのシンプルでひたむきな試合に魅力を感じたものだった。

 オルセンをリベロに、長身のK・ニールセンとクリストフテをDFとして相手2トップのマークにあて、シベベェク、ビルフォルト、イェンセン、ラウドルップ、アンデルセンと5人の MF、2トップにクリステンセンとポウルセンを置いた布陣は、試合によって多少のバリエーションはあったが、大会に臨むチームの基本線になっていた。

 リベロのラルス・オルセンは、84年にいたモアテン・オルセンと似たタイプだ。位置のとり方がうまく、DFラインは安定していた。

 両サイドのFBというかMFというか、右のシベベェクと左のアンデルセンは広く開き、特に左のアンデルセンは前にも後ろにも鋭い動きで広いスペースをカバーした。骨太の頑健な身体つきで、かつての西ドイツ代表DFブリーゲル(彼は左利きだったが)を鋭く、回転も早くした感じ。

 このアンデルセンの前進に続く、ラウドルップの内へ、あるいは外へのドリブルが、チームのチャンスを作り、相手の守りに大きな脅威を与えることが、試合を重ねるたびに明らかになる。そして長身のビルフォルトとタフなイェンセンが中央、右へ現われる。   

 相手にとっては、ラウドルップの変幻多彩な動きに気を奪われているうちに生まれたスペースへ、イェンセンやビルフォルトが入ってくることになる。

 イングランド戦の最大の見せ場は、前半はじめ圧倒的に攻めて、自信満々だったイングランドが、ラウドルップのドリブルで突破されてから気勢をそがれた形になったこと。それ以後(全体としてイングランドが優勢ながら)、デンマークにもシュートチャンスが生まれはじめたことだった。そして65分、ポウルセン−シベベェク−クリステンセンと右サイドで作ったチャンスをイェンセンがシュートしたシーンは、ボールは左ポストに当たって得点にはならなかったが、イングランドにとって失点しても不思議のない大ピンチだった。

 守りを固めてカウンターを狙う。そのカウンターは速いタテへのドリブルを基調としている。DF、MFの一人ひとりがボールの奪い合いに強く、ボールへからむ人数も多い(よく動いている)という意欲的なデンマークは、得点を生み出さないまでも、試合ごとにチームの性格がはっきりし、まとまりがよくなってゆく。

 第2戦の対スウェーデンは0−1の敗戦だった。開催国の意地にかけて1勝をあげ、ベスト4進出の足掛かりを固めたいというスウェーデンの意欲と、CFにダ−リンを置いてパスを組み立てようとした作戦が成功した。

 デンマークにもチャンスはあった。ポウルセン、シベベェクのクロスに飛び込んだビルフォルト(胸に当てGKラベリに防がれる)や、イェンセンのノーマーク・シュート(オーバー)などは、特に惜しい場面だった。

 第1戦で、イングランドのシュートを10本も防いだGKシュマイケルは、この試合では見事なセーブを連発してスウェーデンの追加点を防いだ。

 2試合で1ゴールも取れなかったデンマーク。シュートチャンスは多くなくても、決定的といえるチャンスを作り出しながら、シュートそのものを失敗。特にMFのイェンセンは、いい位置へ上がりながらシュートミスでチャンスを逃していたのが目立ったが、まだまだ第3戦の結果によってはベスト4の望みも残っていた。


(サッカーダイジェスト 1992年9月号「蹴球その国・人・歩」)

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