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86年メキシコW杯での活躍

 彼らの次の目標は86年メキシコ・ワールドカップだった。

 今度は欧州第6組の予選でソ連を抑えてトップになっても、驚く者はいなかった。

 本大会の1次リーグで、デンマークはまずスコットランドをエルケーアのシュートで破った(1−0)。次の相手は最も“勝ちにくい”ウルグアイだったが、M・オルセン、ラウドルトップとつないでエルケーアのシュートで10分に先制すると、ポシオの反則退場で10人となった相手を圧倒し、6−1で大勝した。

 ウルグアイが一人少ない人数なのに、攻勢に出たことも得点差の開いた原因だが、ドリブルとパスの見事な組合せは、まことに素晴らしかった。

 第3戦の相手は82年のファイナリスト、西ドイツ。ベッケンパウアーによって84年欧州選手権の大敗から立ち直った西ドイツも、デンマークの破壊力に屈した。特に前半の終了間際に見せたM・オルセンのドリブル突破は、リベロとして勝機をつかむうまさを十分に見せたプレーだった。

 フランスやブラジル、あるいはアルゼンチン、西ドイツ、イングランドなどの“大国”が精彩を欠いた大会の前半で、デンマークとソ連の活躍が注目され、特にデンマークのスケールの大きい展開、速いタテへの突進は、74年のオランダと比べる批評家もいたほどだった。

 決勝トーナメントに進んで、1回戦スペインとの対戦は、33分にPKで1点をリードしながら、DFのパスをブトラゲーニョに奪われて失点すると、試合の流れは変わった。57分に右CKからブトラゲーニョに2点目を決められるとDFは崩れ、1−5という意外な結果となった。

 対西ドイツ戦でアルネセンが2枚目のイエローカードを出され、この試合に出場できなかったのが、私には直接の敗因に見えた。

 素晴らしいプレーヤーを揃えながら、レギュラーとそうでない選手との間に経験の点で開きがあったし、また平均年齢の高いこのチームには、メキシコの暑さも響いたのかもしれない。

 84年に私たちの前に突如として現われ、激しく、タテに突っかけるサッカーで大きな刺激を与えたデンマークは、M・オルセンという大スターやエルケーア、アルネセン、レアビーら1957、58年生まれを軸としていただけに、この大会を最後にチームは再編成しなくてはならなかった。


(サッカーダイジェスト 1992年10月号「蹴球その国・人・歩」)

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