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スペイン――行きたい国の第一候補

 もし、お金と時間があって、2年ばかり海外で暮らしてみないか―――といわれれば(そんないい話があれば―――)、あなたは、どの国をお選びになるだろうか。
 そう、サッカー好きなら、世界中どこで住んでも楽しいに違いない。清潔で能率的なドイツ、アルプスのスイス、サッカーの母国イングランド、明るいイタリアも、粋(いき)なフランスも魅力がある。アメリカ合衆国も行きたいし、南米も…といろいろな国にはさまざまな楽しさが待っているだろうが、いまのわたしなら、まずスペインを第一にあげたい。

 それは、日本の1.3倍とそれほど大きくない国土が、驚くほどの多様な顔を持っているからだ。南はジブラルダル海峡をへだててアフリカ(モロッコ)と向かい合い、北東はピレネーの山脈でフランスとの国境を分け、南部は地中海に面し、北部は大西洋のカンタブリア海。西はポルトガルに接する、ほぼ方形の中央部にメセタと呼ばれる高原があり、海岸に近いところに山脈があり、高い山は3000メートルにもなる。
 アンダルシアのオレンジ畑と、その背後の山々、地中海ぞいのきらめくような明るさ、北部カンタブリア海ぞいの多雨。中央部の乾燥地域は、ハリウッド映画の西部劇のロケの舞台にもなる。

 こうした多様な景観は、その地形と気候によるもの。いきおい、大きく異なった環境に住む人たちは、地方地方で強い特色を持つようになる。
 さらには8世紀に回教徒がアフリカから進入し、西イスラム帝国を興し、15世紀までの700年間にイスラムの文化が根を下したことが、さらにイベリア半島の大きな特色となった。


(サッカーダイジェスト 1989年4月号「蹴球その国・人・歩」)

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