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サッカー 故里の旅 第12回 重要な第2戦につまづき断崖に立つイタリア

チェコ、サッキを追い詰める

『Czech mates Sacchi!! (チェコ、サッキを追い詰める)』(デイリー・エキスプレス)
『Italians left on the brink of disaster (イタリア、破滅のふちに)』(ジ・インデペンデント)
『Apoloni sent off Italy crumble(アポローニの退場でイタリアくずれる)』(ザ・ガーディアン)

 6月15日朝、リバプールのアトランティックタワー・ホテルの305号室で新開を広げ、前日の試合をふりかえっていた。
 フェリーの乗り場の目の前、チャペル・ストリートのこのホテルはタワーと名付けただけに、マージー河からアイリッシュ海の眺望がいい。ビートルズで有名なアルバートドックも近く、そういえば一階のロビーにビートルズのTシャツとキャップの売場があった。


 それにしても、と思う。イタリアがチェコに敗れるとは――。
 W杯でも、この欧州迷手権でも、1次リーグの3試合は、その一つひとつが大切だが、監督・コーチはその第2戦をどのように戦うかが大きなポイントとなる。イタリアは第1戦の対ロシア(11日)を2−1で勝っているから、この日、もしチェコに勝っておれば、2勝で3試合目の対ドイツも比較的余裕をもって戦えるはずなのに。それが負けてしまったのだから、ドイツに勝たなければ準々決勝進出はむずかしい。
 デイリー・エキスプレス紙の「チェコ、サッキ(監督)を追い詰める」はこのことをよく表わしている。


ポボルスキーの巧みなクロス

 午後7時30分キックオフ。その前の場内アナウンスで、イタリアのサポーターは、声援を送りながらオヤッと思ったに違いない。
 ロシアとの第1戦に勝ったメンバーと5人が入れ変わっていた。
 DFは、右からムッシ、コスタクルタ、アポローニ、マルディーニで変わらないが、MFにはアルベルティーニはいるが、あとはD・バッジォ、ドナドーニ、フゼールが入り、FWはゾラとカシラギに代わってキエーザとラバネリ。

 チェコは9日の対ドイツ戦とほぼ同じ顔ぶれ。1敗している彼らは勝利への意欲が強いのか、記念撮影をしないうちに半数が走り出して、呼びかえされる一幕もあった。
 そのチェコの意気込みは4分のゴールとなる。
 右タッチライン沿いからポボルスキーが見事な左足でのクロスを相手DFラインとGKとの間へ送り、第2列から走りこんだネドベドが決めた。オフサイドトラップをしかけたイタリアDFラインのウラをかいたもの。ボールに近い側(ゴールから遠くに)に一人オフサイドがあったが、ボールはそこへ出ないでゴールマウスへ送られ、ポボルスキー側に気をとられたイタリアの右サイド、バック、ムッシはブラインドサイドへ入ってくるネドベドに気づかなかった。
 チェコでは第1戦で注目されたポボルスキーが俊足をとばす大きな動きで突破を図る。シュートも突破もパスも上手なクカをワントップにし、第2列からとび出してくるチェコの攻めにイタリアはしばらくタジタジ。
 しかし18分にイタリアが同点にした。チェコのDFスホパーレクのパスを奪ったフゼールがキエーザとのパスの交換で右サイドに食いこみ、低いクロスを送るとキエーザがこれを決めた。フゼールがボールを取ってからの一連の動きはイタリアのカウンター攻撃の典型といえた。


退場のあとの処置は?

 ゲームはいよいよ面白くなったが、ここでアポローニのファウルが出る。クカに対する後方からのタックルで黄色、この日すでにクカに対する同じようなファウルでイエローを受けていたから2枚目で退場処分となった。
 28分から、センターバックを欠いての10人だから、当然、DFを交代に送りこんで守備ラインを固めなければならないのに10分間はそのまま。チェコはこの間に2点目のゴールを加えた。右ゴールライン際からクカがクロスを送りベイブルがダイレクト・ボレーで蹴り込んだ。これも 第2列からの走りこみだった。
 やっとカルボーニがD・バッジォと交代、彼は左サイドバックの位置 マルディーニがセンターバックのポジションに入った。
 DFが安定すればイタリアは強い。激しい攻防はタイムアップまでつづいた。サッキは休ませていたカシラギをラバネリに代えて57分に、キエーザの代わりにゾラを78分に投入した。2人の力でチャンスは生まれはしたが得点できず、最後のカシラギの絶好のシュートもバーを高くこえた。

 コンディショニングの問題はあるにしてもゾラとカシラギという攻めのタレントを休ませたのはなぜか。彼らを休ませても勝てると読んだのだろうが、そこに過信があったのだろうか。
 この試合から次のドイツ戦まで中6日の休みがとれる。ならば少々ムリをしてもこの試合はベストメンバーで戦い、2勝目を挙げて強敵ドイツに向かう方がよかったのではないか。
 カシラギとゾラを休ませることでチーム全体に「相手はたいして強いチームじゃない」という油断を植え付けはしなかったのか。
 記者会見ではイタリアのメディアから、さまざまな質間があったらしい。気性の強いサッキ監督は信奉者もいるが、1次リーグで敗退ということになれば大変だな――わたしは大会の第2戦の重大さを改めて感じるのだった。


(サッカーマガジン掲載)

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