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アラブ世界の広さと近代性

 86年のメキシコ・ワールドカップのとき、ブレスパスの隣に座ったアラブ人の記者と話した。1次リーグF組で首位となったモロッコのことを聞いたら、アフリカにはモロッコと同じくらいのカがあるチームが多く、そもそもFIFAがアフリカ代表枠を2チームとしていることがおかしいのだと、静かに、はっきりと言っていた。
 彼の会社はサウジに本拠を置き、エジプトやモロッコ、そしてロンドン、ニューヨークでも発行しているという。本人自身はロンドンで働いているとか。しっかりした英語で話す彼の顔を見つめながら、私はアラブ世界の広さと近代性に舌を巻く思いをしたものだ。

 マラドーナの大活躍に話題が集中した感のあった86年メキシコ・ワールドカップだったが、私にはいくつかの輝いた紀憶の残る大会でもあった。フランスとブラジルのあのワクワクする楽しさに満ちたゲーム。イングランドが突然息を吹き返した対ポーランド戦。西ドイツを押さえつけたデンマーク。そんななかで、モロッコのティムーミやGKエザキたちの試合ぶりに強い印象を受けた。


(サッカーダイジェスト 1991年7月号より)

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