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ロナウド(4)98年フランスW杯準決勝で見せたビューティフルゴール

 新年明けましておめでとうございます。08年も皆さんと日本サッカーにとって良い年でありますように――。子(ね)年の今年は、1924年生まれの私にとっても84歳の「当たり年」です。日本協会の川淵三郎キャプテンは、私より一回り若い1936年(昭和11年)の子の生まれ。
 子年はまた、オリンピック開催年にあたっていて、36年は皆さんご存知のベルリン大会。日本サッカーの代表チームが初参加で強豪スウェーデンを破った記念の年。その72年後の2008年は、私にとって7巡目の子年。いわば、「ラッキーセブン」でしょう。
 日本サッカーは日本協会創立(1921年)から満15年で、ベルリン・オリンピックで初優勝し、第2次世界大戦のブランクがあって、その32年後のメキシコ・オリンピック(1968年)で銅メダルを獲得しました。今年の北京大会は、それから40年。今やプロフェッショナルのトーナメントですが、93年のJリーグスタート以来15年の蓄積を持つ日本代表への期待が高まるのは、きわめて自然なことです。もちろん、やさしい仕事ではありませんが…。

 さて、主題の「記憶に残るストライカー」です。前回は番外編が入ったため、今回がロナウドの(ミラン=イタリア、元ブラジル代表)の4回目。フランス大会の決勝ラウンドです。
 98年フランス・ワールドカップ前に、まだ21歳の誕生日前ながら、すでにロナウドは世界のトップに立つスター選手として知られていた。
 6月10日に開幕した大会で、ブラジルはグループステージのグループAで、2勝1敗。トップで16強へ進んだ。その1回戦でパラグアイを4−1。準々決勝でデンマークを3−2で破り、準決勝でオランダと対戦した。

 ロナウドは、グループステージで1得点。決勝ラウンドに入って対パラグアイ戦で2ゴールを奪っていた。
 守りの中央部にやや難があるのと、攻撃の組立てがもう一つスムーズではなくて、ブラジルひいきにはやや物足りない試合ぶりだったが、個人的な力は、やはりどこよりも優れていた。日本でもなじみ深いレオナルド(元・鹿島)のドリブルからのチャンスメイク、リバウドの強烈な左足シュート、蒟蒻のようにとらえ難いデニウソンのキープ。右のカフー、左のロベルト・カルロスの攻め上がりは、その個々のプレーを見るだけでも楽しかった。
 仲間を叱咤激励するドゥンガ主将(当時磐田)。地味で効果的な働きを見せるセザール・サンパイオ(当時横浜F)。彼らのJリーグでのプレーと、代表でのプレーを比較できるのも面白かったし、ベテランのベベットが相手の危険地帯へ入っていく“巧さ”に感嘆したりもした。

 7月7日、マルセイユでの準決勝は、これまでの相手とは違っていた。オランダだったからである。
 GKエドゥイン・ファンデルサール、DFマイケル・レイジハー(アーロン・ビンター)フランク・デブールとヤープ・スタム。MFはロナルド・デブールと、ビム・ヨンク(クラレンス・セードルフ)エドガー・ダビッツとフィリップ・コク。FWはデニス・ベルカンプ、パトリック・クライファート、バウデベイン・ゼンデン(ピエール・ファンホーイドンク)――フース・ヒディンク監督は、組織的な強チームを作っていった。
 ブラジルは、GKタファレル、DFはゼ・カルロス、ジュニオール・バイアーノ、アウダイール、ロベルト・カルロス。MFはレオナルド(エメルソン)サンパイオ、ドゥンガ、リバウド。FWはベベット(デニウソン)ロナウドだった。
 試合は互いに攻め合い、双方18本ずつシュートを打ち、うち枠内に飛んだものがブラジルが10本、オランダが6本。CKはブラジル5回、オランダ6回――延長、さらにはPK戦付きのスリルに富む攻防だった。

 ロナウドは前半にシュートチャンスがあったが、スタムの体に当たり、オランダの長身CFクライファートのヘッドは20cmほどゴールマウスをオーバーした。
 ゴールが生まれたのは47分。ロベルト・カルロスがレオナルドに渡し、レオナルドがリバウドへ、ハーフウェーラインから少し相手陣内に入ったリバウドが速く長いスルーパスを送り、ロナウドが走り上がって受けてシュートを決めた。
 CBの裏を走ったロナウドは、自分の右側を並走して奪いに来るゼンデンを右手でブロックしつつ、左足でシュートした。
 高速の動きの中でボールを処理する能力、見事なバランスはのちにビデオのスローで見ても飽きることのない美しさだったが、左後方からのボールを左足アウトサイドで止め、左足で蹴ったところに、両足使いのこのストライカーの卓越した技術を見た。


(週刊サッカーマガジン 2008年1月15日号)

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