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ドイツとスウェーデン

 日本にいて、大阪と神戸の間にある芦屋に住み、東京までの日帰りでの仕事に慣れていたものだから、航空機の発達しているアメリカでの、日帰りの長距離の取材を計画したのだが、土地の広さについては、いささか認識が甘く、スタジアムと都心、エアポートと都心との距離まで計算していなかった。
 7月2日のボストン・シカゴ往復、3日のボストン・ダラスの往復は、前者は片道2時間半。試合終了後のスタジアム周辺の混雑と交通規制とをくぐり抜けて空港へゆく、ということは、それ自体がひとつの“仕事”のようだった。
 7月2日の朝、ボストンの空港に着いたら、登場受付カウンターの前は長蛇の列。メモリアルデーを、土日の3連休に利用する旅行客らしい。これではダメと係員を探してハンドバッゲージだけの受付はないかとたずね、27番のゲートでチェックを教えてもらって危うく滑り込む。

 シカゴからの帰りは、試合終了とともにスタジアムから飛び出し、プレスバスで地下鉄の駅近くまでゆきそこから30分――搭乗までに時間の余裕もあった。忙しい思いをしたけれど、この日はドイツが久しぶりに彼らの攻撃力を見せて、ベルギーから3点を奪った。チーム最年長のフェラーが登場して、90年のクリンスマンとのコンビが冴えたのもよかった。ただし、そのフェラーの味方ゴール前(GKから見て右手のゴールエリア角当たり)でのヘディング・ミスから1点を失ったのは、ドイツDFの“魔のスポット”と私が呼ぶスペースでの出来事だけに、いささか心もとなかったが……。
 このドイツ代表チームの自陣ゴールエリア右角から、ペナルティエリア右角にかけての地域に、高いロブが上がってきたボールは、不思議なほどに簡単に点を取られてしまうことがある。
 その例の詳述は別の機会に譲るが、今回のフェラーのそれは、わざわざFWの選手が、相手DFの進出をマークして守りに入っての失敗だけに、フォクツばりの、忠実なマンツーマン・マークが裏目に出た(すぐ近く、ヘディングできる位置に味方のDFもいた)のではないかと気になった。
 そうしたドイツのいい点も、おかしな点も、そして、この大会では、後半になるとガタッと動きが落ちてしまうこともまたまた、見せてもらったのだ。

 2日夜10時過ぎにボストンに着き、3日朝6時15分に、またホテルを飛び出し、7時12分のAA(アメリカン・エアー)に乗ったのだから眠ったのは4時間足らず。しかし、8時10分に出された朝食がとてもおいしかった。
「チーズサンドウィッチ」という名で注目したのだが、パンのサンドウィッチではなく、チーズを卵でくるんで焼いたものだった。それと小さな温かいシナモンケーキと紅茶の取り合わせに満足、その2時間後に、機窓から大河ミシシッピを見下ろして、さらに満足した。
 ダラスは、空港―都心―コットンボウルとずいぶん離れているので、タイムアップの笛を聴く前にスタジアムを飛び出して、17時23分発のAA1480便でボストンに戻った。
 ゲームの印象は、サウジの個人的な能力もスウェーデンの組織力にはかなわず、北欧人に大きなハンデとなるはずのダラスの暑さはサウジの選手たちをも疲れさせ、動きの量ではスウェーデンの方が上だった。


(J-ELEVEN 1995年3月号「FLYING SEVENTY W杯USA’94 アメリカの旅」)

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