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エウゼビオ(6)63年の世界選抜でスタート名を連ね、66年W杯の激戦で本領発揮

 3月26日、対バーレーン戦(アウェー)は0−1で敗れた。
 テレビ観戦では、いくつかの危うい場面のあと、相手側に足のけいれんを起こして倒れる者が増え、このままでいくと引き分けという、いささか楽観気分が出始めた81分の失点だけに、もったいないことだった。
 しかし、反面、そうした流れの中で自陣FKをいったん後方に戻し、そこからロングボールで仕掛けたバーレーンのカウンターは見事だったと言える。日本のペナルティ・エリアのライン近くで、このボールを取ったイスマイル・ラティフはゴールラインぎりぎりから、やや浮き目の早いクロスを送り、これを取ろうとしたGK川口能活がキャッチできず、ボールが方向を変えて飛んだところにアラ・フバイルがいてヘディング。ボールは川口を越え、ゴール左下へ転がり込んだ。

   イスマイル・ラティフがボールを受けて(テレビ解説者は、「ハンドの反則があった」と言っていたが――)クロスを蹴るまで、日本側は誰もディフェンスに行けなかった。ゴールラインいっぱいからのクロスだったので、ボールを注視する日本側のGK川口は、中央の相手9番を同時に視野に入れることは難しい場面だったろう。
 高原直泰という攻撃の軸を欠いての試合で、一つの“負”を背負っていた日本代表は、“6月シリーズ”での挽回に懸けることになる。

 さて、エウゼビオの連載――。
 ヨーロッパのクラブの頂点に立ったエウゼビオとベンフィカは、次の62−63年シーズンにも3連覇(エウゼビオにとっては連覇)を目指した。スウェーデンのノルチェーピング、チェコのデュクラ・プラハ、そしてオランダのフェイエノールトといった強豪チームをそれぞれホームで破り、アウェーで引き分けという危なげない戦いぶりで制して決勝へ進んだ。
 相手はミラン(イタリア)。DFにパオロ・マルディーニ(ミランの現キャプテン)の父、チェーザレ・マルディーニやジョバンニ・トラパットーニがいた。攻撃では、ブラジル人のアルタフィニが知られていて、ジャンニ・リベラが頭角を現していた。

 自信満々のベンフィカはエウゼビオが決めて前半を1−0でリード。ハーフタイムの更衣室でも皆の表情は明るかった。しかし、後半にアルタフィニのゴールで同点とされてから、調子が変わった。エウゼビオは負傷し、コルナもケガを負った。ミランの堅い守備はベンフィカの攻撃を跳ね返し、アルタフィニが勝ち越しゴールを挙げる。2年続けて歓喜の笛を吹いたウェンブリー(イングランド)での決勝で、ミラン側の喜びを呆然と見つめなければならなかった。

 63年にエウゼビオは再びサッカーの聖地ウェンブリーに「世界選抜」のメンバーとして登場。イングランド協会創設100周年記念の催しで、イングランド代表対ザ・レスト・オブ・ザ・ワールドが10月25日に行なわれた。スコアは2−1でイングランドが勝ったが、エウゼビオはアルフレッド・ディステファノ、フェレンツ・プスカシュ、デニス・ロー、レイモン・コパといった錚々たるスーパースターとともに16人の世界選抜に選ばれてプレーした。
 ベンフィカとエウゼビオのヨーロッパの王座への挑戦はなお続き、64−65シーズンはミラノでの決勝まで進みながらインテル(イタリア)のカテナチオに敗れてしまった(●0−1)。そして次の65−66シーズンには第2ラウンドでマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)と顔を合わせ、1勝1敗ながら得点4、失点7で敗退。しかし、66年のエウゼビオには、ワールドカップという別の大きな舞台が待っていた。

 ヨーロッパ第4組の予選で、ポルトガルはトルコに2勝、チェコ・スロバキアと1勝1分け、ルーマニアと1勝1敗で合計4勝1分け1敗。グループ首位で大会出場権を獲得した。大会前にノルウェー、スコットランド、デンマークへ遠征し、ホームでウルグアイ、ルーマニアと対戦。このウォームアップシリーズで快勝したことで、チームの士気は高まった。

 1966年6月11日。サッカーの母国での初めてのワールドカップが、ウェンブリースタジアムで幕を開ける。
 開幕試合のイングランド対ウルグアイ(第1戦)は0−0で引き分け。観衆8万7148人は、開催国が無傷で第1戦を終えたことに安堵しながら、点の入らない試合にイライラした。このロンドンでの第1組の手堅い試合に比べると、マンチェスター、リバプール地域での第3組では、6月12日の第1戦でブラジルが2−0でブルガリアを破ると、13日の第2戦でポルトガルが3−1でハンガリーを下し、15日には、そのハンガリーがブラジルを3−1で破るという大番狂わせを演じた。ペレの負傷したブラジルとエウゼビオのいるポルトガルの第3組が注目の的となった。


(週刊サッカーマガジン 2008年4月8日号)

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