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グラスゴーからベルファストへ

 アイルランドに初めてサッカーが入ってきたのは、島の北東部のベルファスト。1877年、スコットランドでの試合を観たビジネスマンが、この面白いゲームを自分の国に紹介しようとしたのが始まり。
 その人はJ.M.マッカレー(McALEY)。ついでながらマック(Mc)や、オー(O)が姓につくのはケルト系――。1863年、イングランドでFA(フットボール・アソシエーション)が設立され、それまでボールを蹴ったり、相手を突き飛ばしたり、取っ組み合ったりしていた古い形のフットボールから、“手を使わない”フットボールを確立して10年余、スコットランドでも、このルールによる競技が広まっていた。
 いまのサッカーともラグビーともつかぬ古いフットボールは、イングランドだけでなくスコットランドでも、海を隔てたアイルランドでも古くから行なわれていた。今でも、アイルランドにはゲーリック・フットボールという、サッカー用のボールを抱えてプレーするフットボールが盛んなのは、その名残といえる。

 スコットランドから、2つのクラブが帯同試合にやって来たのが1878年10月24日。ベルファストでの国際試合は大きな刺激となり、翌年、別のスコットランドのチームが来る時には、すでにアイルランドにフットボール・クラブも誕生し、ウルスターFCという土地のクラブが対戦するまでになっていた。
 マッカレー氏の呼びかけで1880年には「アイリッシュ・フットボール・アソシエーション」が設立。ベルファストはスコットランドのグラスゴーに近く、同じケルト系同士の往来は頻繁だったから、サッカーの基地となったのだろう。
 ベルファストを中心に、やがて西のデリー(ロンドンデリー)などにもクラブが生まれ、次いで南の方、ダブリン市にも移って、やがて全島にフットボールが広まってゆく。

 1880年の協会創立と同時にアイリッシュ・カップが始まり、1890年からはリーグも発足している。そのカップ戦では、南のダブリンのクラブ、シェルボーンが1906年、1911年、1920年と3度、ボヘミアンズが1908年に優勝しているが、リーグでは1920年まで南のクラブは一度も優勝していない。


(サッカーダイジェスト 1991年3月号「蹴球その国・人・歩」)

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