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ナシオナルのトレーニング場
第1回トヨタカップで、日本のファンは、自分たちにとって、ほとんど無名のウルグアイのクラブが、サッカーの“母国”イングランドの名門、ノッティンガム・フォレストを破るのを見た。フォレストには、世界的GKのピーター・シルトンやFWのトレバー・フランシスなどの有名選手がいたが、ナシオナルは見事なディフェンスでフォレストの攻撃をはね返し1−0で勝った。得点は、右からの速いクロスを受けたCFビクトリーノが“たたら”を踏むように片足で身体を支え、右足のシュートを決めたもの。ウルグアイ選手の大きくはないが、強靭な筋肉とバランスのよさをみせたゴールだった。
このナシオナルの支配下プレーヤーは250人。1部20人、3部(21歳以下で2部とは言わない)15人、4部(19歳以下)が20人、5部(17歳以下)20人、6部(15歳以下)40人と、1部以外は年齢別に分かれている。14歳以下は、いわゆる少年サッカーで、12・13歳になると、テストを受けるために毎年、4千人くらいがやって来るという。
これらの各年齢別の各部には、それぞれコーチとフィジカル・トレーナーがついているのはヨーロッパと同じ。ここのやり方は、特にフランスに似た点があった。これは当時の監督のムヒカ氏がフランスでコーチの資格を取ったせいかも知れない。もっとも、ウルグアイはスペイン語圏なのに、教育制度ではフランスにならっているところがかなり多いようだが……。
クラブの本拠は「10月8日通り」にあるクラブ事務所で、セントラル・バルケという2万人収容の球場を裏側に持ち、クラブの社交室、応接室、カップの陳列棚などの広さはなかなかのもの。それにもまして、郊外のロス・セベデスにあるトレーニング場の2面の芝生の素晴らしいこと。ここにはフィジカル・トレーニング室を持った宿舎と食堂があり、合宿もできる。欧州のビッグクラブ、たとえばバイエルン・ミュンヘンやACミラン、あるいはFCバルセロナなどに比べると、財政規模も小さいから、宿泊用の建物などは立派とはいえないが、わが国のトップスポーツであるプロ野球の練習場と比べても決して見劣りしない。GNPを考えれば、あらためて、この小国のスポーツでの蓄積の大きさを知ったのだった。
(サッカーダイジェスト1990年4月号より)