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ガウチョの剛毅不屈

 このロス・セベデスでムヒカ監督にインタビューしたとき、彼からマテ茶をすすめられた。マテ茶はガウチョ(牧童)が好んで飲む。日本のお茶に似てニガ味が強く、小さなひょうたん型の容器(マテ)に茶の葉(ジェルバ)を入れ、熱湯を注いで細長い吸い管(ポムビージャ)ですするのだが、マテ茶を飲む人たちをブエノスアイレスではほとんど見なかったが、モンテビデオではよく見かけたものだ。馬に乗って、牛や馬を追って1日中を暮らす、男の中の男の仕事といわれたガウチョへの憧れが、いまでもマテ茶を飲むという形で残っているらしい。

 また、コパ・デ・オロのペットマークが、原住インディオ“チャルーア族”の子供がボールリフティングしている図柄(それもカカトで)だったが、勇敢でヨーロッパ人の支配に屈しなかった原住民への敬意が、こうした大会のペットマークに表われているとも聞いた。ウルグアイ人の心の底には剛毅、男らしさ、勇敢さへの敬意が強いように思えた。そしてまた、彼らのサッカーには攻めでの勇敢さ、守りでの剛毅と不屈さがあるように思えた。

 87年のコパ・アメリカで、私たちは不調のアルゼンチンが、準決勝でウルグアイに敗れるのを見た。1ゴールを奪って守りの体勢に入ったときのウルグアイ人の強さは、トヨタカップでのペニャロールやナシオナルの単独クラブも、代表チームも同じだった。そしてまた、そのカウンター・アタックでフランチェスコリとアルサメンディが健在なのを確認した。

 フランチェスコリというプレーヤーは、たとえ相手がトリッピングに来ることを予測しても、恐れず相手のハナ先ギリギリのところをスピードで突破していく(そのために倒されることもある)プレーヤーで、高い技巧とともに、その強さが魅力だ。

 昨年暮のW杯南米予選では、彼ら2人にルベン・ソサという左利きのウイングが活躍し、一気に代表チームの得点力が高くなった。ペルー、ボリビアを相手に4試合で7得点は、もともと守りに強いだけに、対戦する相手にはじめからイヤな予感を持たせる。ベテランのルベン・パスもまだ力があるから、ベストメンバーがそろえば、イタリア90は期待できる―――ウルグアイの人々は、代表チームが“大国”のハナを明かすだろうと、モンテビデオで見守っている。

(サッカーダイジェスト1990年4月号より)

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