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コパ・アメリカ91への期待

 どうしても時間のやりくりがつかないため、チリのコパ・アメリカ(南米選手権)を現地で取材することができなかったのは、私のサッカー生活での“残念”のひとつだ。
 というのは、ワールドカップの中間年に行なわれる地域大会のなかでも、欧州選手権と南米選手権はそれぞれのプレーヤーやチームのレベルの高さから、ぜひとも見ておきたい大会であるからだ。

 今回のコパ・アメリカは、イタリア90が終わった翌年であり、次のワールドカップ(アメリカ)へ向かって南米各国が、どのような新しい“顔”を登場させるか、ナショナルチームのニューモデルを見る、楽しみの多い大会だと思う。

 前回のブラジル大会(1989年)は、そのあとにワールドカップ予選を控えていたため、コパ・アメリカもワールドカップへのドレス・リハーサルだったが、今回は勝利を目指しつつ、代表チームの新しい方向を見いだそうという、監督たちにとっては難しいテストの場であり、代表選手たちには実績を積み重ねる大舞台である。そしてまた、日頃各国リーグを直接見て歩くチャンスの少ない日本のサッカー人には、南米各国の新しい流れを知る絶好の展望台でもある。

 マラドーナ時代からの転換を図るアルゼンチンが、何を世に問うのか。“新しいディエゴ”と呼ばれるディエゴ・ラトーレはどれほどなのか。87年のこの大会でデビューし、ワールドカップでスターとなったカニーヒアは…。
 89年大会に優勝したブラジルは、イタリア90での不運からどのように立ち直るのか。海外組を少なくして、国内残留組を主としたファルカン監督の狙い通り、代表の新しい顔が働くか…。
 フランチェスコリやパス、アルサメンディの去ったウルグアイは? ルベン・ペレイラは新しいチーム・リーダーになるのか…。

 3強と呼ばれるアルゼンチン、ブラジル、ウルグアイのモデル・チェンジに興味が集まるだけでなく、まだまだ檜舞台でプレーをみせてほしいバルデラマやレディン、イギータたちのコロンビア。
 クビジャス時代の栄光の復活を図るペルー…。
 かつては3強にとって、“お客さん”だったのが、いまでは“鋭い針“を持つようになったボリビア、エクアドル、ベネズエラなど。それに、トヨタカップにオリンピアを送り込んだパラグアイ。
 そんな各国のチームプレーとタレントたちについて、現地からの詳報を待つのは誠に楽しいが、開催国チリの1千万国民にとっては、1日1日が期待と不安に明け暮れるエキサイティングな15日間に違いない。
 彼らの代表チームは、今年のリベルタドーレス杯チャンピオン、つまり12月のトヨタカップに南米代表としてやってくるコロコロを中心に編成されている。チリ代表の試合ぶりは、その点からも世界の注目の的である。


(サッカーダイジェスト 1991年8月号「蹴球その国・人・歩」)

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