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ロマーリオ(3)94年W杯南米予選でも重要な得点、本大会でも本領発揮

 世界のスポーツ王国にあって、世界で最も盛んなスポーツがマイナーである不思議な国――USA・アメリカ合衆国で開催された1994年ワールドカップで、サッカー王国ブラジルが24年ぶりに王者に返り咲き、4度目のタイトルを握る。その功労者の筆頭が、ロマーリオとなるのだが、実はこの大会の南米予選も彼は、例によって監督批判が問題となってメンバーから外されたこともあった。
 ブラジル代表は、この予選の前半のアウェー4試合で1勝しただけ。後半にようやく巻き返し、最終の最も重要なウルグアイ戦で起用されたロマーリオの2ゴールで5勝目を挙げて、勝点1差でボリビアを抑えてB組首位で本大会に進んだのだった。ロマーリオ不在で成績の出なかったときのカルロス・アルベルト・パレイラ監督へのメディアの砲火は大変なものだったという。

 94年6月17日、シカゴのソルジャー・フィールドでのドイツ対ボリビア戦で、米国大会は開幕。24チームを4チームずつ6グループに分けた1次リーグがスタートした。ブラジルは、スウェーデン、ロシア、カメルーンと同じBグループ。第1戦の相手はロシアだった。
 注目のFWは、ロマーリオとベベット。かつてのペアが復活し、MFはドゥンガとマウロ・シウバが中央、ライーとジーニョがワイドに開いた。CBはリカルド・ローシャとマルシオ・サントス。サイドは右がジョルジーニョ、左がレオナルドという、のちにJリーグでも馴染みになる選手たちがいた。
 先制のゴールはロマーリオ。27分に左CKをファーポスト近くで、ダイレクトシュートで決めた。ヘディングを狙ったボールがそのまま落下したのを、相手よりも早く落下地点に走り込んで、右足のアウトサイドでとらえて流し込んだ。その素早さと、ボールタッチの正確さはシュートのときの腰の安定とともに、まさにロマーリオのスタイルだった。
 その素早い動きを止めようとしてロシア側にトリッピングの反則が出て、ライーが61分にPKで2点目を加えて勝負あり。

 6月24日のブラジルの第2戦も同じサンフランシスコのスタンフォード・スタジアム。相手は、アフリカの雄カメルーンだったが、39分にロマーリオが先制ゴール。相手の攻めからドゥンガがハーフウェーラインでボールを奪ってスルーパスを送り、ロマーリオが相手DFの内側を走って、飛び出してきたGKベルの脇下を抜いた。ランの速さ、崩れない姿勢、落ち着き――28歳だったが、百戦錬磨の経験が見えた。後半に入って、カメルーン側に販促退場者が出て10人となる。CKからマルシオ・サントスのヘッドで2点目が生まれ、72分にはロマーリオとGKベルとの絡みからのボールをベベットが決めて3−0とした。

 3試合目の対スウェーデンは、デトロイトのポンティアック・シルバードーム――。
 6月28日のこの日、スウェーデンは23分にアンデションが長身特有の長い右足のリーチを生かすシュートで先制した。それに対してブラジルは後半、ロマーリオのゴールで同点として引き分け、グループをトップで通過することとなった。

 第2ラウンドの最初の相手は開催国のアメリカ。大声援を受けた米国代表は、闘志あふれるプレーを続ける。前半の終り近くにレオナルドがヒジを使って相手の頬を打ったとして退場処分。ブラジルは10人となったが、巧みなパスと個々のキープ力で圧迫し始めて、73分にベベットがシュートを決める。ロマーリオがドリブルで突破し、エリア内のベベットにピンポイントのパスを送ったものだ。ベベットは懸命にスライディングで防ごうとする相手DFより早く右足インサイドで叩き込んだ。2人のストライカーのパーフェクトな連係だった。

 準々決勝の相手はオランダ。会場はダラスのコットンボウル。この大会は各都市の有名なアメリカンフットボールのスタジアムを使用。各スタジアムの収容力が大きいこともあり入場者数はかつてない数となる。
 オランダはルート・フリット、マルコ・ファンバステンが既に去り、ロナルド・クーマンとフランク・ライカールトがベテランとして守りの軸となる。攻撃では、俊足のマルク・オフェルマルスやデニス・ベルカンプがいた。
 ブラジルは開幕のころとはメンバーに少し変動はあったが、アウダイール、マルシオ・サントスのCBに右のジョルジーニョ、左にベテランのブランコ。MFは中央部がマウロ・シウバとドゥンガ、ワイドがマジーニョとジーニョ、FWはもちろんベベットとロマーリオだった。前半は0−0。後半は45分間で5得点が生まれるエキサイティングな展開となった。


(週刊サッカーマガジン 2008年6月3日号)

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