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【番外編】日本代表FW クロスの精度を高め、ニアにもファーにもシュートするFW。ポジションプレーの力を上げよう


 スイス、オーストリアでのEURO08(ヨーロッパ選手権)でのオランダの好調ぶりは素晴らしい。
 何より嬉しいのは、これまでオランダ代表チームの恒例とも言える選手間の対立の噂が聞こえてこないことだ。
 それにしてもオランダ代表はいつの時期にもそれぞれのポジションに適合した資質(体格、走力)を持ち、その役柄に必要な「ポジション・プレー」を身に付けていることに改めて感心する。


 さて、連載のストライカーの記憶は1994年ワールドカップ(W杯)に優勝したブラジルの少数攻撃の軸となったロマーリオだった。彼らのハイライトであった94年W杯・米国大会は前回で終了。この号では、クラブとの契約や、監督との意見の食い違いなどで話題の多かった彼の側面を眺めてみようとも考えたが、日本代表が2010年W杯・南アフリカ大会のアジア3次予選を突破したこともあり、6月シリーズでの試合ぶりを振り返り、攻撃面から見つめることにした。
 5月のキリンカップのコートジボワールとの戦い(○1−0)3次予選6月シリーズで、まずホームでオマーン(3−0)に勝ち、アウェーでそのオマーンと分け(△1−1)タイでのアウェーの戦いを制し(○3−0)このグループでの2位以内が決まった。

 ホームのオマーン戦は、遠藤保仁の左CKを中澤佑二がヘディングで合わせて先制。2点目は中村俊輔のロングパスを前進していた闘莉王がヘディングで落として大久保嘉人がシュートを決め、3点目は長友佑都→松井大輔→中村と横につないで、中村がフェイクでかわして右足シュートを決めた。主力が欠けていた相手に10分という早い時間に先制したことが、快勝のもと。
 アウェーでのオマーン戦は、相手はレギュラーメンバーが揃い、守りもしっかりして、また中盤でつなぐよりロングボールを多くするという「対日“有効”作戦」で来た。暑さもあり、苦戦というより負けても致し方のない環境だったが、PKを防ぎ、全員の頑張りで引き分けにした。
 日本の得点は玉田圭司がペナルティエリア内にドリブルで入って、トリッピングで倒されて得たPKを遠藤が決めたもの。

 タイとの試合は、左CKから2得点。1点目はショートコーナーで中村からリターンパスを受けた遠藤がダイレクトでファーへ送り込み、闘莉王が相手より高いジャンプで叩き込む。2点目は闘莉王がニアへ動き、遠藤からの好球を中澤がヘディングで決めた。
 2人の背の高さと、ヘディングの巧さと、遠藤のキックの正確さ。さらにはゴール前の位置取りから、ヘディングのインパクトに至るまでの駆け引き、ファイティングスピリットなど、全ての点でタイに勝っていた。
 3点目は、交代で入った中村憲剛が左前のスペースへ走り込んだところに、駒野友一がパスを送ってノーマークシュートを決めたもの。駒野がやや強引に内へ持ち込み、相手に絡まれながら粘ってドリブルしたのと、その“間(ま)”を生かして中村憲がスペースへ飛び出したのが生きた。
 3試合で7得点。このうち4得点がリスタート(左CKから3、PK1)3得点がパスをつないだ後。大久保、中村俊、中村憲のシュートだった。

 さて、これからは――。
 チーム一丸での組織プレーが重要となるが、やはり何といっても攻め込みの回数もそこそこあるのだから、FWの決定力と両サイドからのパス(クロスも含む)さらにシュートの巧さが重要となる。
 若い内田篤人にしても、長友(ケガをしたが)にしても、頑張り屋の駒野にしても、この点のレベルアップが重要となる。
 いま好調のFW玉田にしても、あれだけの突破力、スピードを持ちながら、彼のシュートの角度が一つだけなのが惜しい。左サイドへ進入してシュートのときにニアポスト側へズバリと蹴り込む形があっても良い。現に彼は、2006年のドイツ・W杯、対ブラジル戦でニアに決めている。

 平均してU−23代表の選手も含めてシュートのコントロールができていないのは、ボールを蹴っている回数が少ないからだろう。
 巻誠一郎や矢野貴章のように空中戦に威力を――とされる選手たちも、かつての釜本邦茂のように、仲間へピシャリと渡すヘディングパスや、巧みな位置取り(ボール落下点の見極め)に自信を持つようになるのは、これから。各プレーヤーの一つひとつの技術や、スタートダッシュの速さを、わずかでも上げようとする努力が最終予選を南アフリカ大会につなげるはずだ。


(週刊サッカーマガジン 2008年7月8日号)

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