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1980年欧州選手権で決勝進出

 1980年のヨーロッパ選手権は、地域予選を勝ち抜いた7チームと開催国を加えた8チームが一堂に集まる「ミニ・ワールドカップ」の新方式になった。

 ベルギーは地域予選でオーストリア、スコットランド、ポルトガル、ノルウェーと同じ組で4勝4分けの成績でトップとなり、イタリア大会に出場。本大会の1次リーグではイタリア、イングランド、スペインと同じ第2組に入り、第1戦はトリノで行なわれ、相手はイングランドだった。

 この6月12日の試合で、わたしは初めてベルギー代表チームを見た。といっても、同じ日にミラノでイタリア―スペイン戦を見るため、スタジアムでのテレビ観戦だった。もともと、この大会に欧州まで足を運んだのは、8ヶ国の代表チームを一度に見るチャンスと思ったからだ。やはり、お目当ては最盛期のキーガンのいるイングランド、新しい西ドイツ、78年のW杯で若返ったイタリア、82年のワールドカップ開催国、スペインというところだったが……。

 イングランドは、この試合のスタートを見る限りなかなか好調。しかし、ベルギーに同点に追いつかれたあと、スタンドでサポーターが騒ぎ、警官が催涙弾を発射したため、ガスがグラウンドに流れて試合が中断し、この中断後は、すっかり調子が落ちてしまった。

 むしろ、わたしにはベルギーの弾力性のある試合ぶり、浅いDFラインでオフサイド・トラップをしかけて相手の攻めをイライラさせ、ミッドフィールドではベテランのバンムールが、緩急自在のボールキープで相手の予測を狂わせるのが面白かった。長身のストライカー、クーレマンスは、CKのヘディングで競り勝ち、さらに、味方からゴールマウスにボールが戻ってきたときには、姿勢を立て直してシュートを決めたのだった。

 イングランドとの第1戦を1−1で引き分けたベルギーの第2戦の相手はスペイン。やはり、有効なオフサイドのワナと、チャンスに攻めあがるDFの読みがスペインを上回って2−1で勝った。そして、第2組の首位をかけてのイタリアとの対戦は、引き分ければ決勝進出を約束されているベルギーが、イタリアの攻めを防ぎ切って、計算どおり0−0の引き分けに終わった。

 カテナチオを発案し、ヨーロッパと世界に守備重点のサッカーを流行させた本家イタリアを相手に、ベルギーは守りに徹してイタリアのイレブンを焦らし、ファウルを誘発した。そのお株を奪った戦略と実行力には、まったく恐れ入った。もちろん、守り重点でサッカーの面白味を少なくしたという不満は残りはしたが……。


(サッカーダイジェスト 1989年11月号「蹴球その国・人・歩」)

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