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マルキーニョス他 ACLで見た鹿島とガンバのゴール。クレバーな組織攻撃とブラジル人ストライカー


「心に残るストライカー」というこの連載を始めたのが2007年3月だから、満2年が過ぎ、3年目に入っている。
 ワールドカップや欧州選手権(EURO)あるいはチャンピオンズリーグ(以前はチャンピオンズカップといった)などで、活躍した優れたFWの記憶をたどり、改めて当時の情景を読み、ビデオを見直して、そのストライカーの特徴と、その成長過程を解きほぐしてゆくことで、あっという間に過ぎた700余日だった。
 これまでの10人のストライカーが終わり、次はオランダのデニス・ベルカンプを取り上げたい。ワールドカップで活躍し、イングランドのアーセナルでゴールを重ねたストライカーだが、その前に、今回は番外編として最近のACL(アジアチャンピオンズリーグ)での日本チームのゴールについて――。


 上位チームの成長によって、ここのところJリーグに充実感が出てきている。
 もちろん、試合中のミスパスや、折角のタイミングをつかめないプレーなどに失望や不満がないではないが、リーグ全体に、個人力アップがあり、組織プレーの進歩があり、層が厚くなったことによる交代選手の使い方のうまさがあり、J1もJ2も良くなってきた。
 その表れが、ACLでの日本4チームの好成績とも言える(ACLへの参加が4強を成長させたといえるが……)。
 5日のACL、Gグループ、鹿島アントラーズ対水原三星ブルーウィングスの3ゴールにその証を見た。

 27分の1点目は、右CKのチャンスに野沢拓也がショートコーナーを仕掛け、マルキーニョスがゴールラインのペナルティエリアいっぱいで受けて、野沢に戻し、野沢が送り込んだ低いライナーをDFの大岩剛がヘディングで叩き込んだもの。ニアサイドに青木剛が飛び込む“陽動”もあって、大岩はノーマークでヘディングした。
 大岩は名古屋にいた頃から注目していた選手で、2000年に磐田に移った。現在J16年目、36歳のベテラン。この試合ではDFの柱である岩政大樹の負傷欠場による出場だった。身長187cmの岩政だけでなく、180cmの大岩に合わせるためのショートコーナーを選択した野沢、マルキーニョス、そして青木、大岩の「あうんの呼吸」があったと言えるゴールだった。野沢のクロスパスも良かったし、野沢へリターンパスを返す前に、小さな“間”(ま)をとったマルキーニョスのうまさにはヒザを叩く思いだった。

 2点目も左から右へ大きく振ったボールを小笠原満男が受けてドリブル、右サイドを内田篤人が駆け上がるが、小笠原は右へ展開せず、ゴールへシュート性の速いボールを送り込む。興梠慎三がニアを走りすぎ、相手のGKイ・ウンジェがボールをはじいたところをマルキーニョスが押し込んだ。小笠原の選択と、そのボールへの2人の反応――1点目は停止球から、2点目は流れの中から、それぞれチームワークの面白さを見たゴールだった。

 3点目は75分、前掛かりで圧迫を続ける水原の“力攻め”に耐えながらのカウンター。
 相手最終ラインのウラへ出たボールを興梠がドリブルしてDF2人を引きつけ、左へパス、マルキーニョスが決めた。疲れが出てくる時間帯の中で、速さを生かした興梠の頑張りとパス、そのボールを受けて飛び出してくる相手GKの上を抜くシュートをしたマルキーニョス、そのシュートのためにトラッピングでボールを浮かせておいて軽く蹴ったところがJ1得点王の落ち着きというべきか――。

 6日のACL、Bグループ、山東魯能対ガンバ大阪で、アウェーのガンバは、遠藤保仁が前半の終わり近くに2枚目のイエローカードで退場して10人となる不利な戦いを1−0で勝って5戦全勝とした。
 59分の唯一のゴールは左サイドのルーカスから橋本英郎にボールが渡り、橋本がドリブルしてペナルティエリア内のレアンドロへ。このパスを受けたレアンドロがDF一人をかわし、2人を前にして左足でシュートして、ゴール右下隅に決めた。一人かわしてシュートに入る前に“一呼吸”置いたのは、身についていた自然のうまさということになるのだろうか。

 鹿島のゴールも、ガンバの得点も、いずれも現状の日本チームらしい、見事な組織プレーからだが、これに関わっている2人のブラジル人たちが日本選手と変わらぬ体格であるのを見ながら、このパーツにも日本人プレーヤーが関わるようになってほしいと思うのだった。


(週刊サッカーマガジン 2009年5月26日号)

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