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34年イタリアW杯 チェコスロバキアの準優勝

 34年、イタリアで開催された第2回W杯は、チェコスロバキアにとって、その実力を世界に示す大きなチャンスだった。国民の期待を背に1回戦はルーマニアを2−1、2回戦はスイスを3−2で破り、準決勝もドイツを3−1で撃破して順調に決勝進出。

 決勝の相手イタリアは、準決勝でスペインの名GKサモラの堅守にあって、再試合までする苦戦の末の決勝進出であった。対するチェコはサモラとともに欧州では定評のGKパネンカやA・プコンとO・ネイエドリーの欧州随一の左サイド・ペアに期待をかけていた。しかし、さすがにムッソリーニ首相をはじめ、イタリア全土の期待をになったイタリア・イレブンの勝利への意欲は強く、延長の末、チェコは1−2で敗れてしまった。

 次の38年大会は、ナチス・ドイツによって、ヨーロッパに戦雲のきざしがあったが、開催国フランスの見事な運営と観客の節度ある応援は大会を盛り上げ、W杯は確固たるステップを刻んだ。結果は前回チャンピオンのイタリアがさらに力を備えての連勝だったが、同時にブラジルのプレーヤーの巧妙なフットワークに欧州人が驚いた大会でもあった。

 そのブラジルと2回戦であたったチェコスロバキアは、激しいゲームの流れから「ボルドーの戦い」とまでいわれるアグレッシブなゲームを展開し、チェコはエースのネイエドリーをはじめ、6人が負傷して、次の再試合には出場不可能となるほどだった。この1−1のあとを受けたプレーオフは、結局、9人の新顔を投入したブラジルが2−1で勝つのだが、南米とヨーロッパのW杯でのエキサイトゲームのはじまり―――チェコは主役を演じたのだった。


(サッカーダイジェスト 1991年4月号「蹴球その国・人・歩」)

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