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ラウル・ゴンサレス(5)新銀河系の初戦でC.ロナウド、カカーとともに先制ゴールを決め2点を演出


 クリスチアーノ・ロナウドが去ったマンチェスター・ユナイテッドのプレミアリーグの対ウィガン戦を見て、その余韻さめやらぬうちに、今度はC.ロナウドを受け入れたレアル・マドリードのリーガエスパニョーラ開幕第1戦を楽しむ――。衛星放送各社のおかげでまことに豪華な8月末のテレビ観戦となった。
 ここしばらく、ゴールを奪うことも、パスを組み立てることも、チームの流れの中の動きも上手になったウェイン・ルーニーが、進化を止めることなく快勝を演出したのは、私にはとてもうれしかった。

 一方、レアル・マドリードがC.ロナウドとカカーという超大物、リヨンから若いベンゼマ(20歳)をはじめ、シャビ・アロンソやアルベロアなどを加えた新しいメンバーで、デポルティボ・ラコルーニャをホームに迎えた試合は「新銀河系」のへんりんを見せての3−2だった。
 そのなかで、94年からこのチームのレギュラーである32歳のラウル・ゴンサレス主将が、先発出場して、先制ゴールを挙げ、2点目に絡んで新銀河系のなかで存在感を見せたのは、さすがというべきだろう。

 レアルの1点目は、
(1)左サイドで3人を引きつけてキープしたC.ロナウドが
(2)中央のL.ディアラに渡し、L.ディアラが右へ振り
(3)カカーが受けて内へドリブル
(4)ペナルティエリア外からスルーパスを流し込み
(5)ベンゼマがゴールエリア角近くでダイレクトシュート
(6)GKに当たり、右ポストに当たって、ボールが無人のゴール前に流れたところへ
(7)ラウルが走り上がって、ノーマークで決めた。

 攻撃の発端は相手のFKをキャッチしたGKカシジャスが右サイドへ戻ってきたカカーに投げ、カカーが中央のラウルに送り、ラウルが左へドリブルして、タッチライン際のC.ロナウドに渡したところ。そこから前述の(1)のプレーにつながっていくのだが、突破力のあるC.ロナウドの脅威で相手が左サイドを警戒したとき、その手薄な右へボールを運び、カカーがドリブルを仕掛けて、これも突破力を「ちらつかせて」、ベンゼマの裏への飛び出しにパスを送った。
 カカーのパスのタイミングのうまさ、ベンゼマのシュート動作の速さが結びつき、それがポストに当たって直接はゴールにならなかったのだが、そのボールの転がった位置に、この攻撃に絡んだラウルが走り込んでいたところが、彼らしい。ボールが左から右へ動いている間にラウルはトップの位置、ベンゼマとともに相手の最終守備ラインに並びかけていたのだった。

 レアルの2点目はC.ロナウドのPKだが、ラウルが開いて守備ラインの裏へ飛び出してボールを取ったところで、相手GKアランスビアが防ごうとしてラウルを倒したもの。
 左サイドからのクロスを防がれ、そのクリアを取ったL.ディアラが中央25mから右へパスを送り、アルベロアが最初のクロスのタイミングを遅らせて、もう一度キープし直して中央やや右寄りのL.ディアラにボールを渡したとき、ラウルが守備ラインの裏へ走ったもの。
 いったん、ペナルティエリア内(右からのクロスに合わせようとして)に入り込んでいたラウルが、L.ディアラにボールが戻ったときに、後方へ短く走ってペナルティエリアの外へ出て、オンサイドの位置から小さな円弧を描くようにターンして裏へ走ったところが、彼のうまさだった。
 このPKを決めたC.ロナウドが生き生きとプレーし始め、新銀河系のスタートは満点とはゆかぬまでも、サンティアゴ・ベルナベウのサポーターにも、テレビ観戦の当方のサッカー仲間にも、とても楽しいものとなった。

 この連載(ラウル)の第1回で、フロレンティーノ・ペレス会長の返り咲きによって、2000年から2006年にかけての銀河系チーム、ジネディーヌ・ジダンやルイス・フィーゴ、あるいはデビッド・ベッカムなどのスーパースター群の時代にも、レアル生え抜きのスタートして活躍したラウルが、新しい銀河系でどのように働くか――、という期待をしていたのだが、この日の試合でラウルのプレーは、若いスーパースターとともに魅力あるものだった。
「レアル・マドリードは世界一のクラブであり、そのサッカーは強いだけではなく、エンターテインメント性にも富んだもの、見て楽しいもの、ファンをわくわくさせるものでなくてはならない」というペレス会長は、彼の最初の「銀河系」のときも宿敵バルセロナからフィーゴを引き抜き、ユベントスからジダンを移籍させた理由をこう語った。その大きな投資は、スーパースターの名声を利用したマーケティング戦略によって十分な利益を生むと言っていた。
 新銀河系の試合ぶりを眺めながら、第1期銀河系での若いラウルを次号で振り返ってみよう。


(週刊サッカーマガジン 2009年9月23日号)

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