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ラウル・ゴンサレス(7)フィーゴとジダン、第1期銀河系のレアル・マドリード。100周年の欧州制覇


「新銀河系」といわれる今年のレアル・マドリードの滑り出しは、まずまずというところだろう。クリスチアーノ・ロナウドは得点を重ね、カカーも見事なパスを見せている。若い外国籍のスーパースターの中で、クラブ生え抜きのラウル・ゴンサレスのプレーをテレビで見るのも楽しい。彼の前方からのプレッシングによってチーム全体の動きが良くなるのを見ると、32歳のこのストライカーの素晴らしさを改めて思うことになる。
 そのラウルの連載は、ちょうどフロレンティーノ・ペレスが初めて会長に就任して「クラブ100周年にレアル・マドリードが世界一のクラブであることを示そう」とした2001−02シーズンにかかるところ。
 前号で宿敵バルセロナからルイス・フィーゴを獲得し、リーグ優勝(00−01)を果たしながら、チャンピオンズリーグで敗れたあと、イタリアのユベントスからジネディーヌ・ジダンを獲得したところまで紹介した。

 個性の強い大スターたちが集まって、果たしてチームとしてまとまるのだろうか――といった懸念もあったが、このシーズンにレアルは欧州チャンピオンに向かって進んでいった。ご存じのとおり、このクラブが世界中に名を知られるようになったのは1960年代のアルフレッド・ディステファノの時期――。チャンピオンズカップ(現・チャンピオンズリーグ)に5連覇したときからだ。
 ディステファノやフランシスコ・ヘント、さらには「マイティ・マジャール」のフェレンツ・プスカシュ等の華麗な攻撃プレーは、はるか東アジアのフットボーラーである私たちの憧れとなっていた。
 ただし、そのあと66年の優勝はあったものの7回目のタイトルまでに32年かかった。ラウルの時代に入って98年に7回目の優勝、2000年に8回目の欧州チャンピオンとなった。フィーゴが加わった前シーズンは準決勝でバイエルン・ミュンヘンに阻まれた。

 このシーズンのチャンピオンズリーグで、レアルは1次リーグAグループで、ASローマ(イタリア)ロコモチフ・モスクワ(ロシア)アンデルレヒト(ベルギー)と戦い、4勝1分け1敗の首位で第2ステージへ進んだ。ここのCグループでもパナシナイコス(ギリシャ)スパルタ・プラハ(チェコ)FCポルト(ポルトガル)とのリーグ戦を、5勝1分けの首位で通過した。

 ラウルは「クラブの7度目の優勝のときは、チーム全体が燃えていた。8回目は準々決勝でマンチェスター・ユナイテッド、準決勝でバイエルンという強敵を倒してのタイトルだった。9回目の優勝は少し余裕があった」と自身の3回の優勝の欧州タイトルについて話している。
 第2ステージまでのリーグ12試合でレアルは得点27、失点10と、随一の攻撃力を示した。ラウルはここまで5ゴールを決めていた。

 準々決勝の相手はバイエルン、アウェーでの第1戦を1−2としたあと、ホームでは2−0で快勝した。
 準決勝はバルサ。この年はリーグ不振で予選ラウンドを勝ち上がってのセミファイナル進出だったが、レアルは相手のカンプノウで2−0、サンティアゴ・ベルナベウで1−1の引き分けで退けた。
 アウェーでの1点目はラウルが中央での巧みなボールキープからDFラインの裏へ送ったボールをジダンが左から走り込んで決めたもの。ホームでの唯一のゴールはラウルで、ジダンがドリブルで左から中へ入ってきてラウルに渡し、ラウルがしっかり狙って左足シュートを叩きこんだ。

 2002年5月15日、ハンプデンパークで行なわれた決勝、対レバークーゼン(ドイツ)は、レアルの2−1の勝利だった。
 1点目は8分に左タッチラインのスローインにラウルが飛び出し、ロベルト・カルロスのロングスローを受けて決めたもの。
 スローインのときにはオフサイドはないと知っていても、ハーフラインを相手側へ数メートル入ったところだったから、ラウルの走り抜けは相手には読めなかったのだろう。ディフェンダーを置き去りにしたラウルは左足シュートを右下に決めたが、ロベルト・カルロスのロングスローの能力を生かす彼らしい飛び出しの成功だった。
 このあと同点にされ、レバークーゼンの猛攻にたじたじとなる場面もあったが、ジダンの左足ボレーシュートで2−1。これもロベルト・カルロスからだが、今度は彼が突進し、相手と競り合いながら高いボールを送ったのを、ジダンが落下点で左足でとらえた。
「銀河系」はまず100周年の欧州制覇で一つの目標を果たしたが、優れたスターたちと共に、その特徴を生かし、自らの特色を発揮してラウルが輝いた年でもあった。


(週刊サッカーマガジン 2009年10月20日号)

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