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ラウル・ゴンサレス(8)2002年日韓共同開催のW杯、スペイン代表でベスト8へ


 ラウル・ゴンサレスが25歳で迎えたレアル・マドリードのクラブ創立100周年に、大目標であった「3冠」は果たせなかったが、欧州チャンピオンズリーグ優勝というクラブにとって伝統的に最も重大な欧州のタイトルを手にすることができた。
 スペインだけでなく、イタリア、イングランド、ドイツといった各国の名門クラブをしのぐチャンピオンズリーグ9回のタイトルは第15代会長フロレンティーノ・ペレスも誇り得る「第1期銀河系」の成果だった。
 準々決勝でバイエルン・ミュンヘン、準決勝でバルセロナといった宿敵を退けての決勝進出もクラブ会員には快感だった。ファイナルの相手はバイヤー・レバークーゼンという、この舞台では馴染みの薄い名前だった。彼らは準々決勝でリバプール、準決勝でマンチェスター・ユナイテッドという「常連」を倒しての進出で、ミヒャエル・バラックやオリバー・ヌビーユらドイツ代表、さらにはブラジルのルッシオもいて、予想以上の強敵だった。

 優勝の殊勲者は先制ゴールのラウルやビューティフルな2点目を決めたジネディーヌ・ジダンよりも、68分に交代で入ってゴールを死守した若きGKイケル・カシジャスがふさわしい――という声が挙がったほど。
 カシジャスはラウルよりも4歳若く、レアルのカンテラ育ちで、早くから注目された逸材だった。このクラブにはラウルと同世代のホセ・マリア・グティエレス「グティ」がその左足の巧みなパスとドリブルで知られているが、彼もクラブ生え抜きの選手、ルイス・フィーゴや、ジダンのような超大物を獲得することで話題を集めるレアルだが、こうしたクラブ育ちのプレーヤーがマドリードへの忠誠心を持ち、会員たちの人気の核となっていることも忘れてはならないだろう。
 こうして自らの3度目の欧州制覇と、チャンピオンズリーグ34得点の記録を手にしたラウルには、スペイン代表の2002年ワールドカップが待っていた。

 日本と韓国との共同開催によるFIFAワールドカップ2002 KOREA JAPANは5月31日から6月30日までの1ヶ月にわたって行なわれた。
 私たち日本人にとっても隣の韓国の人たちにとっても、初めてのワールドカップはまことにエキサイティングで、生涯、忘れることのない経験となったが、東アジアという環境の異なったところでの大会は、欧州勢にはハンディキャップとなり、異変の相次ぐトーナメントとなった。

 5月31日の開幕試合にまずハプニングが起きた。98年大会チャンピオン、フランスがAグループ第1戦でセネガルに0−1で敗れたのだった。
 ダビド・トレゼゲのシュートが右ポストを叩き、ティエリ・アンリのシュートがバーに跳ね返されるなどの惜しい場面もあったが、ジダンの欠場が痛かった。
 開幕5日前の親善試合(対韓国)で腰を痛めたのが原因らしいが、5月15日のチャンピオンズリーグ決勝から2週間で大会に臨む過密日程が響いたと言われた。フランスはグループリーグで1勝もできずに無得点のまま敗退した。呼び声高いポルトガルも1次リーグで去った。

 ラウルとスペイン代表はグループリーグで3戦3勝してこの組のトップで第2ステージへ進んだ。6月2日の対スロベニア(3−1)では、ラウルが前半終了間際に先制した。ルイス・エンリケがドリブルでペナルティエリアに侵入して相手に絡まれてボールが左へ流れたのをラウルが決め、後半にはフアン・カルロス・バレロン、フェルナンド・イエロ(PK)が追加した。
 2試合目は6月7日、相手はパラグアイ。ベテランGKホセ・ルイス・チラベルトがいて堅い守りで知られるチームだが、スペインは2点を奪った。1点目はフランシスコ・ザビエル・デペドロの左からのクロスにラウルが飛び込み、レアルの仲間フェルナンド・モリエンテスがヘディングで決めた。2点目はイエロのPKだった。ラウルが突進し、倒されて生まれたチャンスだった。
 3戦目は南アフリカ(3−2)。スペインのリードを南アフリカが追いつくという見る者には面白い戦い。先取点はラウルで、ガイッカ・メンディエタのスルーパスに飛びだしたGKアンドレ・アレンセがファンブルしたのを奪って無人のゴールへ送り込んだ。
 1−1から今度はメンディエタが決めて前半は2−1。後半、53分に同点にされると、その3分後にラウルが3点目を奪った。ホアキンがドリブルで右から中へ持ち込みつつ、ファーへふわりとクロスを上げると、そこにラウルがいてヘディングで決めた。

 16強によるノックアウト・システムの1回戦の相手は、アイルランドだった。プジョルの右からのクロスをモリエンテスが決めて8分に1−0としたが、PKを同点とされ、延長も同点のままPK戦となり、GKカシジャスの働きで3−2で勝った。


(週刊サッカーマガジン 2009年10月27日号)

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