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90年イタリアW杯 コスタリカ戦

 パネンカがローマでイタリアと優勝を争ってから56年後、1990年に彼の後継者たちは、90イタリア・ワールドカップで大活躍した。1次リーグを2勝1敗で勝ち進み、16チームによるKOシステムの1回戦は4−1でコスタリカに快勝。準々決勝で西ドイツに0−1で敗れた。

 ベスト4には進めなかったが、彼らの試合ぶりはまことに技巧的で、攻守ともにバランスがよく、見て楽しいチームだった。

 6月23日の対コスタリカ戦は、ベングロシュ監督にも、サポーターにも楽しい試合だったろう。1次リーグC組で“老舗”のスコットランドを1−0、北欧の巨人スウェーデンを2−1で倒し、ブラジルの猛攻にも0−1で耐えたコスタリカに対して、チェコスロバキアは長短のパスを駆使して両翼から攻め、スクラビー、クノフリチェクら長身FWが空中戦の強さで圧倒した。相手チーム守備陣の要となる名GKコネホが欠場したという幸運はあったにせよ、スコットランドやスウェーデンのように、コスタリカの堅守を攻めあぐむといったことはなかった。一人ひとりのテクニックとパスプレーが随所でコスタリカの守りを崩し、スクラビーのヘディングを生かすために、最上のボールを送れる位置へ入っていった。

 1点目は11分にスクラビーが右サイドでボールを受け、これをタテに流す。クノフリチェクがペナルティエリアのゴールライン近くまでボールを追い、コスタリカDF二人にからまれながら後方のモラフチクに渡す。モラフチクは左足のカーブキックをゴール前へ。すでに好位置へ入っていたスクラビーがヘディングで決めた。

 クノフリチェクが相手ボールになりかけたのを取り返し、奪いにくる二人に対して身体でカバーしながらボールを確保してバックパスしたのが最初のポイント。そしてモラフチクの正確なクロスパスとスクラビーの位置取りの良さが、第2のポイントだった。

 2点目もスクラビーのヘディング。これは右のクノフリチェクからのクロスを、相手DFがヘディングでクリアするところハシェクがさらにヘディングでゴール前へ送り、スクラビーが相手の背後から前へ身体を突き出してヘディングした。相手DFとの身長差もあったが、それを生かせる上体の柔らかさやボールに対しての反応の良さが目についたゴールだった。

 3点目はFK、ゴール前20メートルからクービックの左足スローカーブのキックが右上スミに決まったビューティフル・ゴールだが、FKの原因はハシェクの突進だった。コスタリカも反撃に出ていたため、五分五分の形勢からドリブルで攻め込んだハシェクの意欲が素晴らしかった。この広い動きをする主将は、次の西ドイツ戦では右ポスト(攻める西ドイツ側から見て)内側で二度もシュートを防いだから、ご記憶の読者もおられるだろう。

 4点目もスクラビー。右CKをゴール正面で相手DFとの競り合いに勝ってヘディングした。

 ハイクロスを長身のストライカーがヘディングで決める―――というのは、いかにもイングランド的に聞こえるが、チェコスロバキアはクロスを蹴る点へ行くまでの攻めに変化がある。代表のストライカーとしてルホビーというヘディングの名手もいるが、足の負傷でベストの状態ではなく、大会には若いスクラビー(24歳)が起用され、それが成功を収めた。


(サッカーダイジェスト 1991年5月号「蹴球その国・人・歩」)

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