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インステップのインサイドとアウトサイド


インステップのインサイド。これで固まってしまうな

 さてキックには足の部分の使い分けで色々な種類のキックがあると先に書いた。要するに色々な種類のボールを蹴るために足のあらゆる部分を使おうとするのだけれど、その呼び名は人それぞれに意味が少しずつ違う場合が多くて、まったく正確にそれぞれの部分をはっきり区分するわけにはゆかないようだ。一応私なりに分けると、トウ、ヒール、インサイド、アウトサイド、インステップ、インステップのインサイド、インステップのアウトサイド――と7つになる。だいたい足首関節を挟んで内側がインサイド、それに対応する外側がアウトサイド、甲部分がインステップで、そこから内側に落ちる面がインステップのインサイド、外側へ広がる斜面がインステップのアウトサイドになる。
 ところでインサイドとインステップのインサイドとは相当広く重なり、アウトサイドとインステップのアウトサイドも同様である。またインステップとそのインサイドおよびアウトサイドおよびアウトサイドも互いに重なり合う部分が広い。インフロントとアウトフロントと呼ぶ名も聞くが、私はこれをインステップのインサイドおよびアウトサイドとほぼ同様に解している。このように各部分の領域は決してきっちり分けられるものではない。比較的はっきりしているのはトウとヒールだけだろう。だから図示も難しいが、あえて示せば図1となる。実線で囲まれたAとA部分がインサイドとアウトサイド、波線で囲まれた中央のC部分がインステップ、その左右の点線で囲まれたBとB部分がインステップのインサイドとアウトサイドである。
 したがってキックそのものにも互いにどちらともつかないキックが存在するが、プレーヤーは目的にそって足の面の使い分けをはっきり心得ておかねばならない。  ただ一般的には図1のA部分に当たるアウトサイドはトラップに使うことはあっても、キックに使うことは非常に少なかろう。


インステップのインサイドはしっかり使い分けよう

 インサイド・キックの蹴り足を直角に開くのは足の使い方としては、いくぶん無理がある。またインステップ・キックには真っ直ぐ走ると地面を蹴る心配がある。
 ということから、初めての人に(ことに少年に)自然にやらせておくと、多くはインステップのインサイドを使うようになる。理由はこの蹴り方がやりやすいからである。つまりインステップのインサイドによるキックはごく自然な蹴り方だともいえる。だから、いまさらその蹴り方についてあれこれいう必要はなかろう。また、このキックはボールにカーブをかけやすいし、ボールを上げることも容易だから、パス、クリア、シュート、コーナーキック、フリーキックまで非常に広い用途があることは周知のことだ。

 しかしながら、注意を喚起しておきたいのは、つい蹴りやすいからこの蹴り方で育ってゆくうちに、いつの間にかそれで固まってしまって他の蹴り方と使い分けができなくなってしまうことだ。事実そうなっているプレーヤーは意外に多いのである。そのようなプレーヤーはカーブをかけてはいけない場面にもカーブをかける結果となる。漫然とやっているプレーヤーはしばしば足を十分に外へ曲げなかったり立ち足が近すぎたりしても気づかない。そうした何となくインステップのインサイドを無意識に使っているプレーヤーには、また逆に今こそそのカーブのかかったキックを使ってほしいときにそうしないという場面もまま見るのである。
 前者の例を挙げると図2とか図3などだ。図2はシュートで、右足で蹴るならば、むしろアウトサイドを使って点線のように右へ曲げるとよいのに、インサイドに引っかけるので、実線のように曲がってポストに近づくにつれて左へそれて外れてしまう。図3はRHが右足でウイングにパスしようとしたが、いつの間にかボールは実線のように左へカーブして縦に流れ、×印の相手の中央のバックスやキーパーの方へ近づいて、ウイングは追いつきにくくなってしまう。これも点線のように曲げるためにアウトサイドを使うとよい場合だ。
 次は逆に後者のインサイドを使ってほしい場面である。例えば図4のように、LWがキープしているときCFがLWの前のスペースを狙って走った場合、図のCFの位置まで来てしまうと実線のように真っ直ぐな縦パスを出すよりも点線のカーブを描くパスを内側から出した方が面白い。図5はAからBへの実線の真っ直ぐなパスを相手Xの狙っている場合は、点線のように相手の背後をカーブさせたパスを使えば、受けるBもあとの処理がやりやすい。このいずれの場合も、パスを受け渡しする味方同士の関係位置だけでなく、ボールを受け取ったあとの味方の前に広がる状況を予測できないといけないが、カーブの使いどころの例である。


インステップのアウトサイドはもっと練習しよう

 さて残るはインステップのアウトサイドを使うキックだが、これも今書いたインサイド同様に用途は広い。しかし、まだインサイドほどに使われていない。
 このアウトサイドというのは、足の甲の最も高い稜線部分から外側だが、指も真ん中から外の付け根のあたりまでを含める。指先を下に伸ばしながら内側へ足を曲げると、その部分は平たくて広い面になる。この面の向きを使い分けるわけだ。
 この蹴り方は、足を内側へ曲げるから地面を蹴る心配も少ない。足を十分に内側へ曲げて、できるだけ広く平たい面をつくってボールに対し垂直の面にして当てると、ボールはインステップ・キックと同様に真っ直ぐに飛ぶ。また足の内側への曲げ具合を少し緩めた角度のままで当てると、ボールの中心を少し外れたところを蹴るところを蹴ることになってボールは外側へスワープしながら飛ぶ。一般的には、以上の認識はあっても、実際には十分に使い分けられていないようだ。インステップで真っ直ぐ蹴れない人は、これで真っ直ぐ蹴るようになればよい。

 ところでこの蹴り方でも、インステップでふれたと同様に、バックスイングを大きくしなくてもキックできるように練習しておくとよい。これもやはり膝下の振りと足首のスナップの連動と押しを加えることで蹴れる。押しの気持ちは、このキックでは、全てに必要だが、ことに、真っ直ぐ蹴ろうとする場合や小さいモーションで蹴ろうとする場合には一層必要である。しかし、内側へ曲げた足を外側へ伸ばすような足首のスナップ力はもともとそう強くないから、これを強くすることも必要である。
 その力がつくと、ボールがある程度飛んだ先でスワープする蹴り方ではなくて、はじめからボールが体の向きから外れて外側へ飛んでいくキックができる。相手が正面から向かってきたときには体は左へ逃げながらボールは右の味方へ送るパス(またその逆の動きとパス)もできる。この場合は、しばしば試合で見られるが、パスの勢いが弱かったり、コースが不正確になったりすることが多い。足首から先でしゃくっているのが多いためだ。このときは足を前へ振るのではなく外へ向かって振るのだからバックスイングはほとんどできない。このときも押しが大切だ。押しは蹴り足のひざ下が真っ直ぐに立った状態で足がボールに当たり、そのまま固定して腰で押し出すような感じだ。

 とにかく足の面を色々な向きに変化させ、押し出す力をつけるためには足首関節を柔らかくかつ強くすることが大切なポイントとなる。そうして足首がしっかりしてくると、このキックは飛んだり転がったりしてくるボールを正確に蹴り返すための確実な方法となる。ことに方向を変えて蹴るにはインステップやそのインサイドを使うキックより正確度が高い。なんといっても非常に広くて平たい面を使えるのだから存分に使うべきだと思う。
 たとえば図2と図3の場合に、この蹴り方を使うと、点線のようにスワープして飛ぶことは既に述べたが、またサイドからのパスを正面のゴールへ直接シュートしようとする場合、また、それに似た、方向を変えるパスをしようとする場合などに、どちらの足を使ってもこの蹴り方で正確な狙いをつけることができる。

 以上、いくつかの例をひいて、インステップとアウトサイドを使うキックをもっと広く使うことを勧めたのだが、その正確度をつけるためには、この広い平たいアウトサイドの面にボールを乗せるような感じで、面をべったり使う感触を十分に覚えることが肝心だ。インステップのときにも同じことを書いたが、この感触を覚えると、このキックではもちろん、さらにインステップやそのアウトサイドを使うドリブルでの柔らかいタッチにも関連して役立つようになる。


written by 大谷四郎
(サッカーマガジン 1978年1月25日号)

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