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ウェイン・ルーニー(9)21歳のワールドカップ。初舞台の不満を糧に06−07シーズン再びゴール量産へ


 本田圭佑という、相当な大きさ(182センチ)で体もしっかりしていて、ボールを止めて強く蹴ることができる攻撃プレーヤーが3月3日の対バーレーンで日本代表にフル出場し、役柄を果たして、自らもゴールを決め、仲間にも自分自身にもこのチームの重要なメンバーであることを知らせた。
 岡田武史監督も手応えを感じただろうし、メディアの多くも、サポーターもここしばらくの代表に見なかったタイプの彼の登場と適応を喜んだようだ。
 彼と同年代でタイプの違う岡崎慎司の久しぶりのゴールも、わずかな登場時間でゴールを産む動きを演じた森本貴幸(88年5月17日生まれ)のプレーも見ることができた。

 本田は金沢の星稜高校から名古屋グランパスに入り、2005年3月5日、J1に登場、3シーズン(90試合11得点)の経験ののち、オランダのVVVフェンロに移り、昨年末ロシアのCSKAモスクワに移籍して、欧州チャンピオンズリーグにも出場している。
 グランパス時代から左足のキックで注目され、突っ立った姿勢で、左サイドからノルウェー人FWフローデ・ヨンセンの頭上へ的確な高いクロスを送っていた姿を覚えているファンも多いはず。
 強く蹴れる、またボールのそこを蹴って必要なときに高いボールを送れる――というサッカーで最も必要な資質の持ち主、FKも得意でいま流行の“無回転”も彼の芸の一つだが、“速さ”やランの方を好む傾向のある日本サッカーでは、それほど評価の上がらぬうちに自らヨーロッパへ出て行って、技術を高め、体を練った。
 オランダではドリブルし、パスを出し、クラブの軸となるプレーヤーとなり、自らもゴールを奪うようになった。U−23代表のとき、北京オリンピックの予選で彼が2列目から飛び出してヘディングシュートを決めるのを見て、ステップアップが進み始めたと感じたものだ。南アフリカの本番中に満24歳になる彼はしばらく注目の的だ。


 表題の主ウェイン・ルーニーは、本田選手よりも少し年長でただいま24歳、今年プレミアリーグ4年連続優勝を目指すマンチェスター・ユナイテッドのエースストライカーだ。3月6日、リーグ29節現在得点23(27試合)で、ただいまリーグ得点王。2位のディディエ・ドログバ(チェルシー、コートジボワール)に4点差をつけている。
 チームはFAカップで望みを失ったが、リーグカップ(カーリングカップ)は2月28日の対アストン・ビラの決勝(ウェンブリー・スタジアム)に2−1で勝った。ルーニーはこの決勝でも74分の2点目を決めている。
 欧州チャンピオンズリーグでは2月16日のノックアウトシステムの決勝ラウンド1回戦第1レグ、対ミラン(アウェー)を3−2で制し、ルーニーは後半、65分と73分に2得点している。いずれもヘディングで、大きくはない彼の落下点へ入る上手さを見せつけている。

 前号では、このルーニーが21歳で出場した2006年ワールドカップ・ドイツ大会に触れ、負傷のために出遅れ、調子の上がった準々決勝ではレッドカードで退場した――暗い初舞台を紹介した。
 彼に期待をかけたイングランドのサポーターにも失望の大会だったが、メディアの中にはスベン・ヨラン・エリクソン監督が戦略、ルーニーをワントップに置いたことが失敗で、孤立してボールに触れることの少ないイライラが相手DFとの絡みで反則になったという声もあった。
 ルーニーは「トップで前残りのポジションも嫌いではない。一人相手をかわしたら、ゴールだから……」とは言っているが、大柄とはいえない彼には、広く動いてボールを取り、ドリブルし、仲間にパスを出し、相手の急所に走り込む後ろからの方が2006年では良かったのかもしれない。

 次の06−07シーズンで彼は8月20日の開幕試合、対フルハム(5−1)で2ゴールを挙げ、クリスチアーノ・ロナウドとともに、このシーズンもゴールを重ねる。17得点のC.ロナウド、14得点のルーニーを中心に、マンチェスター・Uの攻撃陣は好調で、38戦28勝5分け5敗、得点83、失点27で、2位チェルシー(24勝11分け3敗、64得点、24失点)を勝点6引き離してリーグの王座を奪回した。
 チャンピオンズリーグは準決勝でカカーやインザーギのACミラン(優勝)と戦い、ホームゲームで3−2、アウェーで0−3の1勝1敗、得失点差で退いた。
 エバートンからマンチェスター・Uに移る大きな理由の一つ、「チャンピオンズリーグ」での栄光は、次の年まで待つことになる。


(週刊サッカーマガジン 2010年3月30日号)

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