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ウェイン・ルーニー(13)好事魔多し、右足首捻挫で戦線離脱。早い回復を祈り、抑えの利いたシュートを見たい


 キリンチャレンジカップ2010の対セルビア(4月7日)を前に、大阪に集結した日本代表が新しく誕生した「堺市立サッカーナショナルトレーニングセンター」で練習するというので覗いてみた。
 このトレーニングセンターは福島にある施設を模して大阪府の堺市が建設したもので、天然芝のサッカーフィールドが5面、人工芝が9面、フットサルフィールド(人工芝)が8面あり、クラブハウス、ロッカールームなどがそろっている。天然芝のフィールドの一つに3032席の観客席(コンクリート)があり、照明設備もついている。
 代表の練習はそのスタンド付きのグラウンドで行なわれた。古いサッカー人から見れば夢のような施設で練習をするのを見ながら、攻撃パターンのパス交換のときなどにも、中村俊輔、遠藤保仁、稲本潤一といったMF陣は、仕掛けのパスの手前の、最初のつなぎ、あるいは展開でも丁寧にボールを蹴っているのに「さすが――」と感じた。
 選手たちのプレーを間近に見ながらこうしたいい設備が増えてくることで、若いうちからしっかりした基礎が身につく選手がどしどし生まれてくるのを願ったものだ。


 表題のウェイン・ルーニーもイングランドのこうしたよい環境の中に生まれたプレーヤーだが、このところ彼のビデオを見ることの多い私は、日本の選手の練習を見ながらも、ルーニーのシュートを思い出していた。ルーニーのシュートには、形は違うけれど、戦前のシュートの名人といわれた川本泰三さん(故人、ベルリン・オリンピック代表、日本選手のオリンピック得点第1号)と同じように、「押さえる」という感覚が満ちている。それがダイレクトシュートにも、ドリブルシュートにも表れている。日本の選手にも、その意識があるのだろうが……。
 そのルーニーの今に至る足取りを予定していたが、今回はチャンピオンズリーグの彼のケガの報から、このストライカーのケガについてみておこう。

「好事魔多し」と言うべきか、マンチェスター・ユナイテッドのストライカー、ウェイン・ルーニーが、3月30日の欧州チャンピオンズリーグ準々決勝、対バイエルン・ミュンヘン戦(アウェー)で試合終了間際に右足首を捻挫してピッチを去った。
 この試合は本誌でもすでに伝えられているとおり、開始早々にルーニーのゴールでマンチェスター・Uが先制したのを、後半にバイエルンが追い上げ、フランク・リベリーとイビチャ・オリッチのゴールで2−1と逆転勝ちした。
 ルーニーの先制で「たとえ1−1で引き分けても、ホームでの第2戦は断然有利になる」と考えたユナイテッドのサポーターたちには、予想外れの結果だが、さらに痛いのはルーニーの故障――。この試合のすぐあと、4月3日のプレミアリーグ、対チェルシーの大一番でも敗れて首位から2位に後退、リーグ4連覇と、チャンピオンズリーグの王座奪回の望みも厳しいものになってきた。

 選手にはケガはつきものとはいえる。がっしりして、強い体を持つルーニーだが、激しいプレミアリーグで相手のゴール前を働き場とするポジションでもあり、これまで何度かケガをし、長期の戦線離脱もあった。
 彼がマンチェスター・Uにエバートンから移ったのは2004年だが、この04年のヨーロッパ選手権に出場したとき、彼はポルトガルとの試合で左足の甲を痛め、このため、マンチェスター・Uに移ってから、リーグの第7節まで出場しなかった。
 この2年後の06年4月にはリーグ戦の終盤で足を痛め、同年のワールドカップ・ドイツ大会でもイングランド代表の最初の1試合には出場していない。大会の2試合目から出場したときも、予想以上の回復の速さが話題になった。
 マンチェスター・Uに移って4年目の07年8月、リーグ開幕試合の対レディングでやはり左の中足骨を痛め、6週間ベンチにいた。10月2日のチャンピオンズリーグに出場して1ゴールを決めているが、1週間後に練習中に足首を痛めて、また2週間休み、結局10試合を欠場している。
 次のシーズンにも故障があり、09年1月の対ウィガン・アスレティック戦で1ゴール(1−0で勝ち)しながら、ヒザの腱に異常があってカルロス・テベスと交代し、3週間以上休んだこともある。

 何といっても、相手の守りの最も厳しい地帯へ踏み込んでいくのだから、接触プレーも多く、ケガも出るのだろうが、そのほとんどは「足」であるところだ。タックルされ、蹴られ、踏まれるといったことが多いのだろうが、これも彼のようなタイプのプレーヤーだからかもしれない。
 チームも、彼自身も、せっかくのチャンスである。ケガが回復し(案外、早いという情報もあるが)、彼の多彩な形のシュートと、その中でも好きな上から叩くシュートを見たいと思う。


(週刊サッカーマガジン 2010年4月27日号)

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