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ウェイン・ルーニー(15)終盤に負傷はあってもプレミアリーグ得点王と、南アフリカでの本番へ働き盛りの24歳


 ボールを蹴った同世代の仲間が少なくなった。何年かの年長者、つまり先輩たちとなると、ほとんどが向こう岸に渡ってしまった。淋しいことだが、近頃はそうした仲間や先輩の次の世代――息子さんたちから「親父のことを知りたいので」と問い合わせが増えたのは、嬉しいことでもある。
 つい最近も、神戸一中(現・神戸高校)で私より3年上の玉木和之(たまき・かずゆき)さんの二人の息子さんが芦屋の我が家を訪ねて来られた。ご長男は東京府立八中(旧制、現・都立小山台高校)でサッカーをしていて、今OB会の世話役でもあるらしい。玉木さん(神戸一中40回)が5年生(旧制中学は5年制)のときは昭和13年(1938年)の全国中学校選手権大会(現・高校選手権)で優勝した。朝鮮地方代表の崇仁商業や東京の豊島師範といった強豪相手の優勝で、兵庫県予選の1回戦から甲子園南運動場での本大会決勝まで無失点、神戸一中の歴位の中でも「最も神戸一中らしいチーム」といわれたときだった。
 玉木さんはその左ウイング、派手ではないがボールを受けたときの姿勢のきれいな選手で、レギュラーで活躍された。
 ひとしきり昔話のあと、最後にやはり話題は、日本代表は南アフリカでどうでしょう――という話になった。私なりの意見を述べながら、代表の寄せる思いは向こう岸の玉木先輩たちも同じだろうと思った。
 多くのサッカー仲間の願望を背負う代表も大変だろうが、6月の本番に向かって日頃の試合を戦いながら体調をうまく持っていってほしいと願わずにはいられない。


 さて、ウェイン・ルーニーとマンチェスター・ユナイテッドは……。
 4月3日の対チェルシー(1−2)と11日の対ブラックバーン(0−0)の2試合にルーニーは出場せず、17日のマンチェスター・ダービー、対マンチェスター・シティに先発で出場、後半29分までプレー(ディミタル・ベルバトフと交代)している。試合は92分のポール・スコールズのヘディングで1−0で勝った。
 途中で交代したところをみると、ルーニーもまだ本調子ではないのだろうが、左サイドのパトリス・エブラからのクロスに合わせた36歳のベテラン、スコールズの一撃で、アウェーの勝点3をもぎ取ったのは素晴らしく、首位チェルシー(勝点77)との差を1に詰めた。
 残り3試合(4月19日現在)にルーニーが全て出場できるかどうかは分からないが、現在は26点でリーグの得点ランキングは依然トップ。2位ディディエ・ドログバとは1ゴール差のまま。シティにはかつての仲間のカルロス・テベスがいるが、テベスもこの試合でゴールはなく、22ゴールでランキング4位(3位はサンダーランドのダレン・ベント=23点)。5位のフランク・ランパード(チェルシー)フェルナンド・トーレス(リバプール)ジャーメイン・デフォー(トットナム)がいずれも18ゴールだから、得点王争いは幅を持たせても上の4人に絞られただろう。ルーニーにとっては初めてのチャンスだけに、体調回復とともにゴール数を上げてタイトルをつかみたいところだ。

 そのルーニーにはプレミアリーグの向こうに南アフリカのワールドカップ本番が待っている。すでに彼とワールドカップについても、このシリーズで何度か紹介している。20歳で臨んだドイツでの2006年は、負傷もあり、退場処分もありで、1ゴールもとれず、彼も代表チームも不満のままに大会を退いた。
 今回のイングランド代表は、欧州予選第6組で、クロアチア、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン、アンドラと戦い、9勝1敗、得点34、失点6、勝点27の成績で、首位で突破したことはご存知のとおり。
 ルーニーはこのうち9試合に出場して、チーム最多の9ゴールを記録している。長身のピーター・クラウチとミドルシュートの名手、フランク・ランパードが4ゴールで続いている。
 前大会にはスウェーデン人のスベン・ヨラン・エリクソンが監督を務め、必ずしも成功とはいえなかった。そのあと、スティーブ・マクラーレンが就任したが、EURO2008の予選でつまずき、代わってイタリアのファビオ・カペッロが監督となった。
 カペッロはチームを立て直し、その手腕を見せて評判を一層高めた。カペッロが選手たちのブレザー着用や、食事の際の携帯電話禁止などを打ち出して規律を高め、チームの一体感をはかった。これまで、二者並び立たずとされていたランパードとスティーブン・ジェラードをともに起用するなど、チーム構成や戦術に定評のあるカペッロにとっても、ルーニーは重要な戦力。代表58試合で25得点の彼にとっても、南アフリカは24歳の働き盛りでの正念場でもある。


(週刊サッカーマガジン 2010年5月11、18日合併号)

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