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独特のスタイルとテクニック

 ユーゴのサッカーといえば、わたしは、まず1974年の西ドイツ・ワールドカップの開幕試合、ブラジル対ユーゴ戦を思い出す。6月13日、午後5時から雨に濡れた芝生で展開された優勝候補ブラジルとの第一戦は、6万5千人の満員のスタンドを失望させたのとは逆に、ユーゴの評価を高めたのだった。

 欧州の地域予選で“サッカーの母国”イングランドを破ってきたユーゴは、高いドリブルのテクニックと短いつなぎのパスでブラジルを翻弄し、左右からの長いパスをゴール前へ送って脅かした。結局、0−0の無得点に終わったが、ペトコビッチのノーマーク・シュート(バーを越す)やシュリアックのヘディング(左ポスト)、アチモビッチのシュート(GK正面)など、チャンスの数は明らかにユーゴの方が多かった。

 このときのユーゴは1次リーグでスコットランドと1−1で引き分け、アフリカのザイールに9−0で勝ち、1次リーグ1勝2分けでブラジル、スコットランドと同じ勝点4ながら、ザイールとの大量点がものをいって、この組のトップで2次リーグへ進んだ。

 2次リーグでは、いきなり西ドイツと対戦し、0−2で敗れたのが響いて、いささか調子が下降、次のポーランド、スウェーデンにも敗れ(ともに1−2)て上位には残れなかった。1次リーグで不調だった西ドイツが調子を取り戻したのと、左サイドのジャイッチが負傷とあって、1次リーグほどには働けなかったことも響いたが、開催国の西ドイツや前回優勝のブラジル、“大国”イタリアなどが不評だった大会前半にあって、クライフのオランダ、ガドハ、ラトーのポーランドとともに、ジャイッチのユーゴは74年W杯を大いに盛り上げたのだった。


(サッカーダイジェスト 1989年12月号「蹴球その国・人・歩」)

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