賀川サッカーライブラリー Home > Stories > >日本代表6大会連続W杯出場

日本代表6大会連続W杯出場

アジアで優位、世界で戦う準備を

 日本代表は6大会連続のワールドカップ出場を決めた。アジアでは勝てるという力は示したが、来年6月、ロシアで行われる本大会に向けて、ここからが本当の勝負となる。しっかりした準備をして臨んでほしい。

スタイル変えた豪州に怖さなし

 最終戦のサウジアラビア戦は、相手が背水の陣で臨んできたため敗れはしたが、予選を通してみればアジアでは勝って当たり前ともいえる戦いで、しっかりと出場権を手にした。
 出場権獲得を決めた8月31日のオーストラリア戦は、これまで日本代表の攻撃支えてきた香川真司(ドルトムント)、本田圭佑(パチューカ)を外して臨んだ。ハリルホジッチ監督はいろいろ思案したと思うが、本番まで大きな試合がなく、若手に経験を積ませたいという意図が感じられた。「全ての試合で勝ってくれ」というファンの声がある中で、非常に思い切った采配だった。
 オーストラリアがこれまでと異なるスタイルで戦ってきたことも日本にとっては幸いだった。東アジアでは唯一の白人主体のオーストラリアは、足技の得意な東アジアの中で体格差を活かした「力ずくのサッカー」という特徴があった。ただ、新しい監督の下でパスをつなぐ意識で戦ってきた。
 パスサッカーに慣れている日本にとって、ボールを上げて競らせるオーストラリアのスタイルはあまり得意ではない。分かっていても、上背で劣るので、競り合いが続けばどこかで破たんしていた。しかし、オーストラリアも上のレベルを目指す「進歩の途上」として、スタイルを変えたのだろう。試合開始からつないできたが、すべてのパスを正確に通し、DFラインの裏へボールを通す力はない。後半になって、何度か高さを生かした攻めを見せてきたが、全体として戦略的な合意、意図は感じられなかった。日本にとって嫌なサッカーをする部分が最後まで感じられなかった。

若手に自信、新たなステップ

 当初就任したアギーレ監督に代わって指揮を執ったハリルホジッチ監督のもとで戦った最終予選。イラン、韓国と対戦しないという幸運もあったが、アジアでは日本の力が抜けている印象を持った。Jリーグが開幕して25年。サッカーが盛んになり、子どもの頃からボール扱いがうまく、身体能力がある選手が増えてきた。今や、代表選手の主力は海外、特にヨーロッパでプレーするような時代になった。以前なら1対1では勝てず、選手の運動量とチームワークでカバーしてきたが、海外で当たりの強さを経験してきた選手が増えた影響で、悪くても五分程度の勝負ができるようになった。
 オーストラリア戦でゴールを決めた井手口陽介(ガンバ大阪)のように、20歳前後の選手も自信を持ってプレーするようになった。若いのに大舞台で緊張する素振りも見せない。
 アジアでは盤石の力を持つ日本代表だが、サウジアラビア戦を見ていると、長谷部誠(フランクフルト)が欠場してしまうと、この程度なのかという面も感じた。ロシアに向けてチーム力を高めていかなければ1次リーグを突破し、世界を驚かせるのは難しい。
 中でもDFラインは、本大会に向けてさらなるステップアップが必要だ。吉田麻也(サウサンプトン)はイングランドの激しいサッカーの中でプレーしているが、定着してきた昌子源(鹿島アントラーズ)など、国際経験が少なく、身体能力にもまだ課題がある。ボール扱いはうまいけれど、この部分は強い相手と対戦し体感して初めて分かること。アジアでの戦いのように自分たちが優位であれば問題ないが、強豪国を相手に受け身に回った時のマークや、間合いの取り方など、本大会までの強化試合で経験を積んでほしい。
 ハリルホジッチ監督は若手選手を積極的に起用したが、その若手でも全部の試合に出ているわけではない。ここからさらに伸びてくる選手が出てくることで、チームに勢いが増してくる。大迫勇也(1FCケルン)のように、中に入っても良く、シュートが出来る選手が増えてきた。最近のチームの中では期待が持てる。自分の得手のシュートをどこまで決め切れるのかが大事になってくる。香川、本田という代表攻撃陣で年長となった2人を外しオーストラリアに勝利し、選手層が厚くなったとはいえるが、2人の豊富な経験をどのように活かしていくのかも重要だ。

国内外を把握、最強のチームを

 1998年フランス大会で初出場して以来、日本は6大会連続でワールドカップ出場を果たすことになった。レベルは着実に上がっているが、メキシコ五輪の頃のように、各チームの主力が集まって長期間の海外遠征が出来る時代ではない。日本の特徴であるチームワークを築く時間が無くなっている。本大会までチームとして活動する時間が限られている中で、どのようなチームをつくっていけるのか。日本のJリーグは終盤戦を迎えるが、ヨーロッパは開幕したばかり。必ずしも試合に出られない選手も多く、コンディションやコンビネーションを整えていくのは難しい。
 指揮を執るハリルホジッチ監督はヨーロッパ組、国内組をしっかり把握して最強のメンバーを編成してほしい。最後に、オーストラリア戦を前に監督の去就が取りざたされた。私は岡田武史監督に続く日本人代表監督を見たいという思いはあるが、協会、ファン、メディアは不安なのか、日本人の名前はなかなか出てこない。逆に言えば、日本人の誰かが欧州の有力クラブで指揮を執るようになることが必要なのかもしれない。ヨーロッパで「なんで日本人の監督なのか」という声をはねのけるような指導者が出てくれば、日本のファンも安心できるのかもしれない。
 最後にこんな話ができるのも、ワールドカップの出場権を獲得できたからだ。2018年6月、ロシアの地に臨む日本代表に期待したい。

(月刊グラン2017年11月号 No.284)

↑ このページの先頭に戻る