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「攻撃的」「守備的」とは(前編)

 2020年が明けた。今年は56年ぶりに2度目の東京オリンピックが開催される。前回1964年大会でサッカーの決勝戦を取材しているが、自国開催2度目の決勝戦も取材してみたいものだ。
 名古屋グランパスは昨季、最終戦でJ1残留を決めた。前半戦は首位に立つような好スタートを切ったが、夏前から失速し、風間八宏前監督からマッシモ・フィッカデンティ監督への交代を経験した。「攻守一体の攻撃的サッカー」を掲げていた前任者から、過去に指揮を執ったチームでは「守備的」なイメージの強い監督へ、2人の監督が指揮を執った2019年、グランパスサポーターの中にも戸惑いがあったかもしれない。
 イタリア出身のフィッカデンティ監督はセリエAなどで選手、監督を経験してきた。イタリアは伝統的に「後ろの重い」守備の強いサッカーをすることでも知られている。
私はサッカーとは体と体をぶつけあう性格上、守るほうが有利な競技だと考えている。足の扱いが抜群にうまいマラドーナのような選手が10人いれば話は別だが、ただ、一つのチームにマラドーナが10人いたら、それはそれでやりにくい。そこが11人で試合をするサッカーの面白さでもある。
 広いピッチで11人を有効に働かせるため、攻撃が得意、守備が得意というそれぞれの個性をどのように組み合わせるかとサッカーの専門家たちは長年研究し、実践を続けてきた。実際の試合では、相手のマークしているところに向かって攻め、妨害されやすい足を使ってゴールを狙うので、そう簡単に2点、3点と決まる可能性は低い。チームの勝利を考えた場合に、まず失点を防ぐ守りから構築していくのは基本だろう。
 まずゴールがあり、そこに22人の選手の中で両チーム1人ずつ手を使えるGKを置く。個人能力向上だけでも点を防げる専門家を養成して、今度はDFというように配置を考える。基本的には相手の攻撃する人数より1人多く守るのが理想的であり、戦術論はいわゆる数合わせの側面もある。ただボードゲームではないので、個人のボールの奪い合いで勝ってしまえばいい。サッカーの面白みはそこにあり、それが90分間続くからお金を払ってプロの試合に足を運ぶ。その中でチームが「守備的」「攻撃的」と別れるのは、指揮官が頭の動きが攻守のどちらにシャープに働くかという「癖」の範疇だと考えている。
 次号ではもう少し、この話を掘り下げてみたい。

(月刊グラン2020年2月号 No.311)

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