賀川サッカーライブラリー Home > Stories > >コロナ禍で迎えたJ1再開。新しい力を見たい

コロナ禍で迎えたJ1再開。新しい力を見たい

 新型コロナウイルス感染の影響で2月23日から中断されていたJ1リーグが7月4日に再開された。真夏の7月から始まる半年間でリーグ戦33試合、カップ戦最大5試合という過密日程になるが、しっかりと準備をして臨み、試合を繰り返しながら日常を取り戻してほしい。
 4月7日に発令された緊急事態宣言を受け、Jリーグ各チームは感染防止対策のため活動休止を余儀なくされ、宣言が解除された5月25日を前後し、相次いで全体練習を再開した。このような経験はどのチームも初めてのこと、再開に向けて準備を積み重ね、いざ試合が始まれば、いかに順応できるかも大事だ。チーム、個々の選手、監督、コーチが、この中断期間に蓄えてきたものは、新しい力となって、今後に向けて必ず役立つはずだ。
 この4カ月あまりの中断期間、2度にわたる再開予定の延期もあり、週1回のリーグ戦という日常を奪われた選手にとっては対応の難しい時間だったと思う。逆に言えば、この時間に生かし、いかに新しいものに取り組んできたかが問われてくる。突然、空白の時間ができてしまうと、多くの選手はコンディション維持を気遣ってしまうが、日々の試合に追われることがないこういう時だからこそ自分と向き合い、自らの能力を伸ばせる大事な時期だったはずだ。2週間もあれば新たなボールの蹴り方や動き、新しい技を見つけるなどチャレンジができるはず。グラウンドでの練習だけで足りなければ、今は映像を見て学ぶなどさまざまな工夫が可能だ。勉強でもそうだろう、追われてやるのではなく、自分でじっくり課題に取り組むことで身についていく。限られた時間の中でしっかりと課題に向き合い、それが達成できたか。まさにやるかやらないかで選手としての価値は大きく変わってくる。自粛期間だからとか、周囲の声とかの言い訳はできない。中断期間に磨いた成長を再開後のピッチ上で見せてくれることを、見ている側は楽しみにしている。
 J1は夏場の7、8月に14試合が予定されている。試合を繰り返す日常が戻ってくる選手たちはもう一度覚悟を決め、模索を続けながら新しい時代を歩んでほしい。日程が過酷であれば若い選手にもチャンスが巡ってくるだろう。それでも、レギュラーと呼ばれる選手は日々のコンディションを整え、この機会にさらに自らの力を高めてほしい。
 この4カ月間を自宅で過ごしてきた私も、Jリーグに先駆けイングランドやドイツ、スペインなどで相次いで再開したリーグ戦をテレビで楽しんでいる。新型コロナウイルスによって世界中から奪われたサッカーのある日常が戻ってきたことは、とても喜ばしいことだ。まだ、大半の試合が無観客だが、映像を通じてサッカーの面白さを示し、世界中の人々がこの機会に「サッカーのある喜び」を改めて感じてくれれば、これに勝る喜びはない。

(月刊グラン2020年8月号 No.317)

↑ このページの先頭に戻る