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選手交代5人が与える影響、求められるスタイル

 新型コロナウイルスの影響で中断していたJ1リーグが7月4日に再開した。4カ月以上試合から遠ざかっている選手たちの動きを見ているが、試合が始まればしっかり合わせてくるものだなと感じている。中断期間を経てシステムを変えているチームもあり、監督も選手も新しいことに取り組んできたことが伝わってくる。
 8月はカップ戦を含め8試合が予定される厳しい日程だ。長梅雨だったとはいえ暑い日々が続く。個々の選手はもちろん、チームとしてのコンディション維持は監督にとって頭の痛いところだ。
 ただ、今回のコロナ禍でJリーグだけでなく、世界の主要リーグも過密日程が予想されたことから、国際サッカー評議会(IFAB)は5月8日、2020年中に終了する大会に限り試合の選手交代枠を3人から5人に拡大する決定を発表した。
 GKを除くフィールドプレーヤー10人の半分が交代できることは、連戦に伴う選手の疲労面を考えればとても大きな決定だが、初めてのケースなので現場レベルでは逆に難しさを伴う。先発する選手と同レベルの選手5人をそろえることは容易なことではない。交代によって逆にチームとしてのリズムを崩し、プラスに作用しないリスクもある。試合では、リードを許しているチームが一度に3人を交代させて局面の打開を図るなど、思い切った策を取るケースも見られた。この新しいルールにチームとして順応し、自分たちのプラスにすることができるか、今年限定とはいえサッカーの新たな面白さを感じる部分として注目したい。
 選手交代は疲労や負傷によって交代する選手のポジションにそのまま当てはめるケースがあれば、時にはチームのシステムや戦術をがらりと変えることも可能だ。長年サッカーを見てきて、日本はポジションプレーを大切にすべきだと常に感じている。私が戦前の旧制中学でプレーしていたころから、1チーム11人、グラウンドの大きさも変わらず、それぞれの選手が相手と対峙し、どのような動きをするかということについて大きな変化はない。強いチームは、それぞれのポジションがどう動くべきかという確固たるスタイルを持っていた。今は子どものころから個人技を重視し、オールラウンドにプレーできる選手を育成しようとする傾向もあるが、子どもの時からそんなに多くのポジションがこなせる選手は、そう多くはいないだろう。まずはポジションプレーから簡単に入り、チームの中でどれだけ役に立つ選手に育てられるかが大事だと考えている。
 その意味で、今季J3に昇格したFC今治のリーダーとして活躍する岡田武史元日本代表監督が推し進める「岡田メゾット」に注目している。チームの哲学に沿ったシステムを実現するための「プレーモデル」を根幹とし、育成年代から原則を指導するやり方は一つの契機になると考えている。

(月刊グラン2020年9月号 No.318)

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