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2021年、高校選手権を見て思う

 2021年が明けた。元日に第100回天皇杯、そして4日には延期されたルヴァンカップの決勝戦をテレビ観戦。ともにファイナルらしい内容のある試合だった。ただ、シーズンを締めくくる試合が終わってしまうと何か気持ちが切れるような感覚があり、せっかくの正月休みなのにもったいないという思いも残る。Jリーグ以前の日本サッカーリーグは秋春制で、1969年からは初詣客が多い明治神宮に近い国立競技場でシーズン真っただ中の元日決勝をスタートさせた。近年、Jリーグ開幕が2月に早まり空白期間は短くはなったが、年が明けてもビッグゲームが続くラグビーのような見せ方を参考に模索することも必要ではないだろうか。
 その空白の時間を埋めてくれるのが、これも冬の風物詩として定着した全国高校サッカー選手権の存在だ。99回大会決勝は、延長戦、PK戦の末に山梨学院大学付属高校が青森山田高校を破り、同じ決勝戦のカードとなった11年前に続く2度目の日本一に輝いた。  連日テレビ観戦したが、レベルは高く、好ゲームも多かった。ただ、あえて言うならば、この年代はもっと攻撃的にサッカーをしてほしい。ゴールを決める選手を育て、得点の多い試合が増えれば、見ている側にとってさらに面白く、より興味を持ってくれるからだ。
 今ではクラブチームも加わったU−18プレミアリーグを頂点に各都道府県でリーグ戦も行われているが、多くの高校チームは真夏のインターハイを目指して走り込みなど厳しい練習を重ね、少し涼しくなった秋から始まる選手権予選で成長する選手によって個性が出てくる。戦中派の私も、11月3日(明治節・明治天皇の誕生日)に行われていた明治神宮大会を目指して夏に走り込み、秋には走り回れるような体をつくっていた。
 守りに関しては教え込めば上達する選手は多いが、攻撃についてはある程度自由を与えながら、いい指導者が少し手を加えていくことも必要になる。地域から全国へ勝ち上がっていく過程で点を取れる抜きんでた存在が成長すれば、選手権への興味が自然と湧き上がってくるはずだ。少し贅沢かもしれないが、特徴が見てすぐに分かるようなチームを見たい。
 全国高校選手権も前身大会から数えて次回が100回目。この間、各地域の素晴らしい指導者がチームと日本を代表する選手たちを育ててきた。現状はJリーグの育成組織や各地のクラブチームの台頭により、必ずしもこの年代のトップがそろっているわけではない。ただ、今年度は無観客だったが、全国へのテレビ放送によって築き上げられた高校選手権の盛り上がりは世界でも類を見ない。ただ、サッカーの基準はあくまでも世界だ。さらにひと踏ん張りしてもらい、もう一段レベルの高いサッカーを見せてほしい。それによって新たに見えてくる景色もあるだろう。96歳を迎えた私もさらに勉強を重ね、2021年もサッカーを見つめていきたい。

(月刊グラン2021年3月号 No.324)

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