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1958年スウェーデンW杯「歴史に残るスーパーゴール」

 準決勝の相手はフランス。フォンテーヌとコパのいる攻撃的チームだった。見事な攻撃の応酬からブラジルが5-2で勝ったが、ペレはそのうち3ゴールあげた。
 決勝の6月29日、ペレはまたしても信じがたいスーパーゴールを決めた。開催国スウェーデンは、1次リーグでメキシコ(3-0)、ハンガリー(2-1)に勝ち、ウェールズと引き分け。準々決勝はソ連を2-0で破り、準決勝では前回チャンピオンの西ドイツを倒して(3-1)の決勝進出だ。
 スウェーデンはベテランのリードホルムが先制ゴールをあげて好スタートを切ったが、ガリンシャがドリブルで二人を抜いてからパスを送り、ババが同点ゴール。結局、試合は5-2でブラジルが大勝したが、ペレはチームの3点目と5点目をあげた。5点目はヘディングで、これも素晴らしかったが、3点目はペレが浮き球でスウェーデンのDF二人を次々にかわし、ボレーでシュートした。ジャウマ・サントスからのロビングボールの落下点に入ったペレは、ペナルティエリアの中で、まず太もものトラッピングでボールを浮かせてグスタフソンの頭上を抜き、自分はその背後に回り込んで、また落下するボールを今度は足で受けて、目の前に現れたベルエソンの頭上を再び抜き、もう一度相手の背後に回り込んでボレーシュート。
 ボールを浮かせて、ゴール前の密集地域をすり抜けてシュート。それも一度でなく二度。ボールタッチの強弱のほんのわずかな感覚が狂えば、相手の上を越えたボールは、思うところに落ちてはこない。その難しいテクニックをやってのけ、まるでウナギのようにDFをすり抜け、落ちてくるボールをゴールへ蹴り込む。スタジアムを埋めた観衆は自分達のゴールが奪われたことよりも、あまりの見事さにただ茫然として、やがて大きな拍手を送ったのだった。
 檜舞台で最高のプレーをした若いペレは、アッという間に世界の頂点に立ち、大スターとなる。
 世界中からペレとサントスFCに招待試合の申し込みが殺到し、1959年には103試合の過密スケジュール。その中で126ゴールも記録している。
 1930年の第1回ワールドカップに参加し、第3回大会では個人技の高さを評価されながら、1950年は“マラカナの悲劇”、1954年には“ベルン戦争”に泣いたブラジル。実力を持ちながら、世界一の座になかなか届かなかったブラジルが、ペレという新しい才能を得た1958年に、ついにジュール・リメ杯を獲得し、今度は世界中からの目標となる。
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