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対ジャマイカ戦、前半0―1 12本のシュートもゴールを生まず

ジャマイカ人のリーチとバネ



 日本のキックオフで始まり、1分に名波のシュートが飛んでスタンドのサポーターを沸かせた。

 自陣から短いパスを5本つないだあと中田が受けてドリブルし、右に開いた城に渡すと、城のキープからのバックパスを名良橋がゴール前へ送り、相手側に当たったボールを名波がシュートしたのだった。

 反転して左足で捕らえたキックでライナーだったが、少し高く浮いたのが惜しかった。


 6月26日、リヨン市のジェルラン・スタジアム、H組の2敗同士の対戦ながら、初出場の歴史を飾りたい日本とジャマイカのそれぞれの意地がぶつかり合った。

 短いパスをつないで、サイドからあるいは中田のパスからチャンスを作る日本は、25分までに6本のシュート。この間、相手のシュートは2本で、明らかに優勢に見えたが、ゴール前を固める相手ディフェンスから得点は奪えなかった。

 クロアチアには1―3、アルゼンチンには0―5と失点の多いジャマイカだが、この日はシモエス監督の守備教育が浸透したのか、彼らのリーチの広さが生きて、日本のシュートを妨害した。

 その中で10分の城のシュートは、左へ開いた彼への中田からのパスが見事なタイミングで渡ったもの。城はノーマークでボールを受け、まさに好機だったが、右足ボレーで打ったシュートは右ポストに外れた。

 50年前にオリンピックの陸上競技で世界を沸かせた先輩たち(前号参照)と同じように、レゲエ・ボーイズと言われるサッカー選手たちも足が速く、歩幅が大きくタックルのリーチが広い。それがボールを奪い合うときに生きて、日本はパスを回して攻め込んでも、シュートチャンスには体と足を寄せられてしまう。

 そしてそのバネは、ヘディングのジャンプの際の日本側への脅威となり、ロングボールでのシンプルな攻めから、ときおりハッとするようなチャンスが出始めた。

 27分に中田からパスを受けた城がうまい反転で1人かわしてゴールに向かい、2人を引き付けて右へボールを流し、名波がノーマークでシュートした。左足で強く捕らえたボールは高く上がってバーを大きく越え、立ち上がった日本の記者たちはガックリと腰を落とす。

 34分に中田が左から斜めにドリブルし、左へ開いた中山へパスを送る。中田得意の角度のパスを受けた中山は、左から中へ持ち込んだが、ドリブルが大きくてダメ。

 攻めても点の取れない日本に、少しずつイラ立ち始めたスタンドや記者が、声を上げたのは38分の城のシュートだった。

 中田が倒されたFKから右へ展開し名波がキープしたのち、ファーサイドにクロスを送ると、左サイドに上がっていた相馬がヘディングで正確に折り返した。落下点に入った城が、モモでトラップしシュート。見事な展開に続くフィニッシュに思わず「ヤッタ」と叫んだ記者たちは、左外へ出たボールにガックリ腰を落とした。

 トラップしてシュートしたときに、相手のグッディソンが防いだのだった。記者席のモニターテレビのリプレーは、一杯に足を伸ばし城の左足シュートを止めるグッディソンを映していた。



チャンスのあとのピンチ



 今度こそ…。自分たちのイメージ通りの前半でのフィニッシュで、得点できなかった、気持ちが次のプレーに響いたのかどうか。

 左CKとチャンスは続いたのに、中田のキックはニアの井原に渡らないで、タッチに蹴り出される。

 スローインする相馬の手がすべってボールが落ちて、相手方のスローインとなり、次のプレーで小村の反則があってFK、日本の攻勢はここで切れてしまう。


 FKから後方へゆっくりボールを回したジャマイカは、DFから一気にロングボールを送り、彼らのゴールが生まれる。

 ペナルティー・エリアの外で井原とジャンプヘッドを競り合ったのは、イングランドのウィンブルドンでプレーするゲイル。彼の頭がボールを捕らえたのかどうか…。エリアぎりぎり、ゴール正面へボールが落ちたとき、右から第2列のマルコムが相馬とともに走り込む。2人ともボールに触れず、勢いあまったマルコムは駆けつけた小村にぶつかって双方倒れる。バウンドしたボールは、左から走り込んできたウィットモアに渡り、ウィットモアは走ってきた勢いを乗せてシュート、ボールはゴール左に飛び込んだ。1―0。


 ぼう然とした記者席も、再開した日本の攻勢に望みをかける。43分に右からのクロスに中山がヘディングで折り返して、城が頭に当てたがバーを越える。その直後、ジャマイカはガードナーのドリブルであわやという場面のあと、日本は中田―名波から、名波がタテに浮かし中山がゴールラインぎりぎりでシュートしようとしたが、GKに防がれて右CK。
このチャンスも、井原にいいパスは届かなかった。

 両チームのカラーがそのままに出た前半、ただし得点はジャマイカ。日本は12本のシュートがゴールにつながらなかった。


(サッカーマガジン 1999年2/24号より)

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