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29本のシュートで1得点追撃及ばず日本3連敗

 フランス98の旅は、大会中から始めて、今度が36回目。前号に続いて、日本対ジャマイカの後半。

 攻めながら得点できず、40分と54分にいずれもテオドール・ウィットモアにゴールを奪われ0―2となり、岡田監督は59分に平野(小村と交代)、呂比須(城と交代)を送り込んで打開を図ったところです。



攻撃また攻撃、平野のヘッド



 投入されてすぐの平野のFKに続く左CK、そのあとの呂比須のシュートとそのリバウンドへの中山の攻撃―GKのはじいたボールをシュートしようとしてトラッピングをDFに奪われた…といった連続攻撃からの惜しい場面があり、サポーターや記者席の期待もふくらんだが、2点差を1ゴール差ににするには、まだしばらくの時間が必要だった。

 中山は62分にもシュートのチャンスをつかんだ。

 中田がドリブルでエリア内に入り、フォローした相馬がバックバス。平野が左足でたたきつけ、ボールはDFの間を通って右へ、中山がノーマークで受けて左足でシュートしたが、今度はトラップが小さく足下へ。踏み込むスペースのない左足シュートはゴールへ向かいながらスピードが乏しく、GKローレンスが横に跳んでキャッチした。

 その1分後、相手の左サイドからのパスを奪って、山口が名良橋へ、名良橋が止めないで呂比須へ。呂比須は、右サイドをダッシュする中山の前へ、ノーマークのスペースで中山は狙いすましてクロスを送り、自陣から発進した平野が、このボールに合わせてジャンピングヘッド。強いシュートだったが、GK正面に跳んで防がれ、左CKとなった。平野の長い疾走は、ボールに飛び込むのが精一杯で、コースを狙う余裕はなかった。



引っかかるラストパス



 この左CKのあと、相手のトップへのパスを相馬がインターセプトして左に開いた中田に渡し、自分でそのまま左オープンスペースへ走り込む。スタンドから見て、その相馬の前にパスが出るかと思ったら、中田は内へドリブルして、右へ送る。意表を突いて、右に開いていた中山を狙ったのだろうが、ボールは低くて中山には渡らずに、DFにヘディングで防がれる。このクリアリングを日本側が拾い、再び中田がキープ。今度は左へ出すか…とみたら、中田はドリブルし、シュートして左へ外した。

 流れの中の“順”…サイドの相馬を選ばず、中山への一発を狙ったところやロングシュートは、いかにも中田らしい選択。結果は不成功だったが、日本の押せ押せムードは強まり、このGKを名良橋がヘディングし、平野が受けて山口へ戻し、山口―呂比須―中山。相手にからまれながらエリアに入ったところでボールを取った中山は、左の平野へスルーパス。

 しかし、オフサイドを警戒して平野が立ち止まってしまったため、通らなかった。

 69分に名良橋が右サイドを突進し、その低いシュートのようなクロスをGKがはじいて右CK、キック力のある平野はファーポスト側へ送ったが、ボールは呂比須を越えた。

 その1分後、平野の左からのクロス。強いグラウンダーは蹴り返され、73分の縦の突進からのライナーのクロスはヘディングされ、クリアを拾った中田のシュートは大きく外れた。身長も高く、ジャンプ力のあるジャマイカDFはクロスをはね返すが、そのクリアを拾われる波状攻撃にマークがずれ始める。



中山ゴンの初ゴール



 74分、待望のゴール。左タッチライン25メートルで相馬が右足で蹴ったクロスは、エリア内右ポスト側で呂比須にピタリと合い、ヘディングで落としたボールを中山が左ポスト前で捕らえた。難しい高さのボレーだったのをよく足に当てた。

 このときの展開は、相手の攻撃を自陣の右サイドで抑えて、そこのFKから中田につなぎ、中田が右の名良橋へ、名良橋から秋田、井原と左へ移して名波へ、名波がキープして、左サイドへ上がってくる相馬に渡す…。左から右へ、右から左へとピッチの横幅を1往復したパスの間に、左前方に平野、中央左に中山、右に呂比須、その後方に中田がいて、ジャマイカのDFも4人の間隔が広くなっていた。

 1―2、記念すべきワールドカップ初得点だが、喜び合う時間も惜しんで、中山も呂比須もゴールネットのボールに走り寄り、呂比須がキックオフのマークへ持って帰る。

 そう、あと15分、すぐまた攻撃に出る日本。79分には若い小野が登場して名波に代わる。

 ジャマイカもバートン(ダービー・カウンティ=イングランド)を投入して、すでに加わっているボイドとのコンビで攻撃力アップを狙う。小野は相手DFの股間を抜いてドリブルシュートして、サポーターを喜ばせたが、右に外れた。

 ロスタイム3分が表示されてすぐ、小野―呂比須―中山―小野と回し、小野が内へドリブルしてエリア隅の呂比須にパス、絶好機を作ったが、呂比須の右足シュートはアウトにかかって、この試合29本目のシュートも得点にならず。残り2分間に日本にシュートチャンスはなく、日本のフランス大会は3敗で終わった。


(サッカーマガジン 1999年3/10号より)

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