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老舗イタリアと新興ノルウェー大会はいよいよ一発勝負に
ビエリへの期待
青い空にイタリア国歌が響いていた。勢ぞろいしたアズーリを記者席から見ながら、このメロディーをワールドカップで聞くのは何回目だったかナ、などと思う。
98年6月27日、午後4時半、キックオフ前のマルセイユ市ベロドローム競技場、風はなく、日差しは強かった。
6月10日に始まったフランス大会も、前日でグループリーグを終わって32チームが16チームに絞られた。
残ったチームを地域別に見ると△欧州=10 イタリア、ノルウェー、フランス、デンマーク、ドイツ、ユーゴスラビア、オランダ、ルーマニア、イングランド、クロアチア △南米=4 ブラジル、チリ、パラグアイ、アルゼンチン
△ アフリカ=1 ナイジェリア
△ 北中米=1 メキシコ
彼らはこの日からノックアウトシステムに入り、まずここマルセイユでB組1位イタリア対A組2位ノルウェー、夜にパリでA組1位ブラジル対B組2位チリの試合が行なわれることになっていた。
セリエAという世界で最も華やかでレベルの高いリーグを持つイタリアは、80年代以降だけでもワールドカップで優勝（82年）、準優勝（94年）、3位（90年）の実績を持ち、これに第二次世界大戦前の2度の優勝（34年、38年）の加わる老舗（しにせ）だ。
今度の大会のグループリーグでは初戦の対チリは1-―2からPKで同点で引き分けという、いささかきわどい戦いだったが、アフリカの雄カメルーンには、相手の反則退場もあって3―0、隣国オーストリアには2―1で勝っている。
カテナチオの本家のこの国では、代表チームはセリエAのクラブのように高額リラでストライカーを買い入れるわけにはいかず、ワールドカップのたびに“ゴールゲッター探し”がついてまわる。しかし今回はワールドカップ予選の最中にクリスチャン・ビエリが活躍し、いわゆるCF（センター・フォワード）タイプのストライカーとして定着したため、そのカウンター攻撃にも威力が出ている。
グループリーグの3試合で7得点という、これまでのワールドカップにおけるイタリアから考えると、驚くほどのゴールを奪ったのも、ビエリの3試合連続、4得点が基盤となっている。
もちろん、イタリアの攻撃には94年のスターで、この大会でもいい働きをしているロベルト・バッジオや、ユベントスでトヨタカップのファインゴールを決めたデルピエロなどもいるのだが、いずれも小柄なテクニシャン。1メートル85、82キロ、スピードもあり、速さと力で押し切れるビエリは、60年―70年前半のルイジ・リーバより、より鋭い印象を受けていた。
ビエリとともに、この日、私が楽しみにしていたのは、DFのアレッサンドロ・ネスタ。監督のチュザーレ・マルディーニのユース時代からの秘蔵っ子、22歳の若さで欧州予選の８試合のうち７試合に起用され、この大会でもストッパーの一人として定着していた。
テレビ観戦では、ディフェンダーのボールがきていないときの動作は見にくいから、スタンドから注視したいと思っていたのだが、残念ながら欠場だった。対オーストリアの前半4分に、じん帯を痛めてしまったという。
もっとも、その代わりを務めるのが、なんとジュゼッペ・ベルゴミ、82年大会優勝メンバーで34歳の大ベテランだった。
GKパリウカとノルウェー
イタリアのDFラインはこのベルゴミ、私には初顔のカンナバーロが中央、左がP・マルディーニ、右がコスタクルタとなじみの2人。MFがモリエロ、アルベルティーニ、ディビアジオとディノ･バッジオ、そしてFWがビエリとデルピエロ。94年の悲運のスター、ロベルト・バッジオはどうやら第3戦と同じように控えにまわる。
ゴールキーパーは96年（欧州選手権）のペルッツィでなく、94年米国大会にも出場したパリウカ、彼はこのときの対ノルウェー戦で、相手FWのレオナルドセンの突進に対してペナルティー・エリアの外で手を使ってボールを止め、レッドカードで退場となってしまったニガイ経験がある。
この前半22分の彼の退場は、サッキ監督がロベルト・バッジオに代えてサブGKのマルケジアニを送り込むという思い切ったさい配と、ディノ・バッジオの69分のゴールで1―0 の辛勝となるのだが、後半早々に守りの要バレージの負傷退場というマイナスの上乗せもあって、94年6月23日、ニュージャージー、ジャイアンツ・スタジアムでのグループリーグ第2戦は、彼らが第1戦の対アイルランドを0―1で落としていただけで、イタリアの長いワールドカップ戦史の半ばでは“グループリーグ敗退”という不安を背負う苦しい戦いだったといえる。
主審の笛が鳴りノルウェーのキックオフ、4年と4日を経た再戦が開始された。
(サッカーマガジン 1999年3/24号より)