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フランスVSイタリア 死闘0−0の120分

カンナバーロの唯一のミス



 45分間、フランスの攻撃に耐えながら、計算通り無失点で終わろうとしていたイタリアにとって、ロスタイム2分の表示が出たあとのピンチは、さすがにヒヤリとしたハズだ。

 デシャンからのパスを受け、これをデシャンに戻し、右へ動いてそのリターンを受けたジョルカエフが、反転して前を向いたときエリア中央やや右寄りに入った彼の前には12メートル向こうのゴールと、GKパリウカ以外には空間があるだけだった。

 デシャンからの1度目のパスを受けたときも、背後にカンナバーロがいて、2度目のパスのときにもいたが、カンナバーロにしては珍しくパスのスピードを読み違えたのか、前で取ろうとして取れず、前を向いたジョルカエフがノーマークでボールを持ってしまった。

 イタリア側の恐怖は、当然フランス側の期待だったが、このジョルカエフとデシャンの見事な変形トライアングルパスから生まれたフリーシュートは、何と左ポストの1メートル以上も外に転がっていった。

 スロービデオのリピートはジョルカエフの右足のスイングがボールを正確に捕らえず、インサイドでいわゆる横殴り的に当て、ボールが内側に回転しながらゴールから遠ざかってゆくのを映しだした。

 そのスロービデオでもうひとつ面白かったのは、デシャンのラストパスのインサイドキック。ジョルカエフからのバックパスをダイレクトで蹴るときに、かかとを押し出すようにして、正確にサイドに当てていた。蹴り足のスイングは小さくてもかかとの押し出しで、短い距離をピュッと伸びるボールがいく。守りの読みにかけては、いつも呆れるほどの能力を見せるカンナバーロが珍しくピンチを招いたのも、あるいは、このデシャンのサイドキックにあったのかも知れない。

 ただし、こういう大ピンチでも深い傷にならないとなると、イタリア側は"ツイているぞ"と思うだろう。

 そのツキを生かすために、C・マルディーニ監督は、いつ、ロベルト・バッジオを投入するのだろうか…。



フランスに増える反則



 後半もフランスが攻め、イタリアが守る形勢は変わらないが、フランス側にファウルが増え始める。

 ひとつには攻め込みながら点を取れないことへの苛立ち、もうひとつはイタリア側の巧妙な妨害行為。笛の鳴るものもあり、鳴らないものもある…それに対するフラストレーションもつのる。

 53分にハイボールを競ったギバルシュの腕がカンナバーロの顔に当たり、ギバルシュにイエローカードが出された。ギバルシュには、その3分前にやはりカンナバーロとの競り合いで笛を吹かれた"前科"があるのだが、実はそれよりも前にジャンプヘディングをしたとき、カンナバーロに足を蹴られて倒れる事件があった。主審はこれを流したが、このあたりからの積み重ねが、イエローカードの元であったかも知れない。



おお、ロビー・バッジオ



 65分にフランスはそのギバルシュとカランブーを引っ込め、アンリとトレゼゲの2人を送り込む。

 その2分後、今度はイタリア、ロベルト・バッジオの登場…。

 フランスのサポーターは新しく加わった若い2人のストライカーの速さに期待をかけ、イタリア側は"ファンタジスタ"ロビーの"味のあるキラーパス"に望みをかける。

 そのロビーは3度、巧妙な攻撃を仕掛け、1本はビエリのオフサイド、2本目は左サイドでデシャンを外してのクロス、ドゥサイイーに当たったのをペソットがシュート(GK正面)。3本目は左からドリブルで持ち込み、エリア内に流し込むパス。ビエリより早く、ドゥサイイーがクリアしたが、ドゥサイイーをもってしても、コーナーキックに逃げるのがやっとという際どいパスだった。

 攻め込みの回数はフランスが多く、ジダンがからんだときには緩と急、右と左の変化が表れるのだが、ロベルト・バッジオの数少ないパスは、攻撃にからむ人数は少なくても相手の脅威になっているように見えるのが、ロビーの"芸"というべきか。

 90分は0−0で終わり、延長に入る。イタリアはすでにロスタイムでペソットをディリービオに代えたので3人が交代、フランスは2人だけで、まだ1人余裕がある。1点を取れば、そこで終わりというゴールデン・ゴールだから互いに攻め合うが、シュートまでいったのはフランスが最初で11分のリザラズ。大きな切り返しで中に入り、右で狙ったが、得意の左足ほどの威力はなくてGKの正面。

 その1分後、イタリアはロベルト・バッジオのボレーシュートがわずかに外れた。アルベルティーニからのロブのパスを、ゴール・エリアラインで捕らえた。スイングは本人のイメージ通りだったろうが、GKバルテズの上を越えながら、ボールの落下は少なく、左角の上を通り過ぎた。

 延長後半に入ると、さすがに動きは鈍る。108分、カンナバーロがイエローカードを出される。あからさまなファウルはしない彼も、トレゼゲの後から足を出す羽目になっていた。

 しかし、疲れていても、イタリアの守りにはミスが生じない。119分のアンリのシュートはコスタクルタの体に当たり、直後のジョルカエフがラインの裏へ走り込んだチャンスも、そのシュートをGKパリウカが体に当てて防いでしまった。


(サッカーマガジン 1999年10/6号より)

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