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1992年トヨタカップ「シンプルな前半の展開」

 この得点の前に、ミューレルはフェレールを相手に左サイドでの1対1で優位に立っていた。W杯やコパ・アメリカでのミューレルは右か、中央での突破役だったが、左サイドでの働きもいいこと、とくに小柄なフェレールを背にしたときのプレーに余裕があって、周囲もよく見えていた。サンターナにすればエリベウトンが使えないための苦肉の策だったかもしれないが、相手DFとの事前の比較が十分にできていたのかもしれない。
 前半を見たところでは、このミューレル、パリーニャとライー、それにカフーが中盤から前の攻め、ビトールとロナウドとアジウソンは中盤にもでてゆくが、6番をつけたロナウドが守りの要(かなめ)としてどっしり構え、ピンタードは前にも出るが、まずディフェンシブなMF。セレーゾは第3列、あるいは第2列の奪ったボールを、有効にする“つなぎ”役。同時に、さりげなく相手の攻めを妨害する(ラウンドルップのドリブルも2回、反則でつぶしている)。
 彼らの得意なはずの、外側にスペースを作って、そこへウイングバックが入ってくるのはほとんど見られなかったが、前半はそれだけ慎重にし、後半にとっておくように見えた。 
 守りの方は、トップからMFにかけてのコースの押さえがうまくいっていたが、前半の終わりごろにストイチコフが中央でボールをキープしたときに、二人で囲みながら左にパスを出されて、ベギリスタインのドリブルに守備網を破られた。シュートが弱く、ロナウド・ルイスのゴールカバーで防いだが、危ない場面ではあった。ブラジルのDF、とくにこれまでサンターナがW杯に持ってきた代表チームのDFは、大きく振られると乱れることがあった。しかし、今回はバルセロナの攻めが、一つには長いパスが少なく、また長いパスを出すプレーヤーがクーマンであることが多く、予測がつきやすいこともあって、混乱はそう多くなかった。

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