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1992年トヨタカップ「ブラジルの強さを証明」

 ブラジル国内では、州選手権と全国選手権の二つの長期リーグがあり、それにトップクラスのチームは、南米のクラブ選手権ともいえるリベルタドーレス杯と、新たに設けられたスーパーカップ(過去のリベルタドーレス杯優勝チームが争う)も加わる。もちろん、4年に一度のワールドカップ、2年に一度のコパ・アメリカもある。その間に、海外遠征をして外貨(ドル)を稼ぎ、国全体の経済悪化によるクラブ財政の危機、ひいては自分たちの収入の不安定を補わなければならない。
 いまのブラジル・サッカー界はこうした問題を抱え、選手は過密スケジュールのために疲れ、それが試合に影響してゲームの面白みは低下し、観客もまた少なくなっている。
 サンパウロは、クラブ財政の基礎が他のクラブに比べて最もしっかりしており、今度の試合に来るにも日程に余裕を持たせ、時差、気候の順応にも十分に配慮した。
 テレ・サンターナという、最もブラジル流の攻撃サッカー信奉者を2年余も監督に置いた(2年間、一人の監督ということが、いまのブラジルではきわめて異例)ことが、チーム作りの成功、ブラジル・サッカーを世界にアピールするトヨタ杯という場での、ビューティフルな勝利につながったといえる。
 ブラジルの側面といえる、きわめて守りに強いセンターバック、ロナウドを擁し、外側のスペースを使えるウイングバックもいる。チームの精神的な柱になるライーを軸にして、見事に個性を配置したチームは、おそらくその好プレーを世界にテレビで宣伝したため、これからも選手の国外流出続くだろう。彼らが欧州で今後、どのような評価を得るかは別として、1992年のトヨタ杯は久しぶりにブラジルのサッカー信奉者たちに喜びを与え、自信を取り戻させたという意味で、記憶されるべき試合だった。

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