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マラカンナスタジアムのスタンド崩壊事故

 そのブラジルのシンボルも、建設後40余年を経て老巧化が目立つようになっていた。私が訪れた1977年には、壁面の塗装も美しく、入場ゲートには花が飾られていたが、ここしばらくは基本的なメンテナンスも怠りがちになっていて、席のペイントは剥げ、壊れたパイプから水が落ち、テラスは水びたしになっていたという。更衣室の完備がこのスタジアムの自慢の一つだったが、部屋にはゴキブリが徘徊し、通路には猫が住みつくといった状態ーという噂だった。
 事故の起きたのは、1992年の全国選手権決勝の日だった。決勝に勝ち残ったのはボタフォゴとフラメンゴというリオの名門同士。マラカナを本拠地とする人気チームは、まず7月12日に第1戦を行い、フラメンゴが3-0で勝った。7月19日の第2戦は、優勝を期待するフラメンゴのサポーターが詰めかけ15万人。試合前から踊り歌っていたが、キックオフの30分前に2階の応援席最前列の柵が壊れて、40人近くが2階から1階イス席の上へ、柵とともに落下した。その事故の模様はテレビの画面にも映し出されたが、映像のショッキングなことに比べ死者の数が少なくてすんだのは、不幸中の幸いといえた。
 試合そのものは2-2で引き分け、フラメンゴが5度目の全国選手権チャンピオンとなった。このチームは1980年、82年、83年、87年にはジーコの活躍で優勝しているが、今度は大ベテランのジュニオールが第1戦で4得点、第2戦で2ゴールをあげる働きを見せた。
 スタジアムの老巧化は1980年代から指摘されながら、改修工事はされておらず、90年代に入って、ラジオで上部でスタンドの壊れがひどいと指摘され、2か月間の閉鎖をしたこともあった。こうしたことから、当初、行うべき改修工事を、費用のないことを理由に実施していないのは、経理の面でもおかしいという声もあがっていた。

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